研究概要 |
核融合炉第一壁材料の高熱負荷時の熱的損傷特性を明らかにするための基礎研究としてタングステン被覆材(グラファイト基板)、モリブデン被覆材(グラファイト基板)および各種グラファイトに対するパルス電子ビーム照射による熱衝撃、疲労試験を行った。被覆材試料はグラファイト基板上に厚さ10μmのW,Moをそれぞれの金属カルボニルを用いたCVD法により蒸着して作成した。熱衝撃試験中の試料表面の温度は本年度購入のデイジタル赤外線放射温度計を用いて測定した。 パルス電子ビーム照射によってタングステン被覆材の表面融解が生じ3熱負荷の値(パルス幅1.5秒)は蒸着温度、フィード温度がそれぞれ700℃、35℃で作成したW被覆材では42.0MW/m^2であったが、500℃、40℃で作成した試料では33.2MW/m^2と減少した。一般に蒸着条件としての蒸着温度の低下、フィード温度の上昇に伴って表面融解が生じる熱負荷の値が減少し、W被覆材の熱衝撃による表面損傷特性は被覆W層のミクロ構造、特性に依存することが確かめられた。 各種の等方性グラファイト(IG-11OU,ISO-880U,#781,G347S)に対する熱衝撃試験の結果から、グラファイトの熱衝撃による特徴的な損傷は電子ビーム照射領域中心部でのクレータ状の浸食であること、粒界での優先的昇華(或いは粒子放出)であることが確かめられた。試料G347Sおよび#781では浸食による重量減少値は、熱衝撃試験中の試料表面温度、平衡蒸気圧から計算で求めた昇華による重量減少値にほぼ対応したが、浸食量の大きいIG-110U,ISO-880Uでは、熱衝撃による重量減少の値は計算による昇華量の5〜10倍程度大きくなっていることが確かめられた。即ち、高熱負荷によるグラファイト表面の浸食は昇華のみではなく結晶粒や結晶粒クラスタの粒子放出によって引き起こされることが明らかとなった。
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