研究概要 |
DIMETのラジカル塩の物性とDMETの誘導体である新規ドナーのETDMにおいて有機超伝導体の探索を行った。DIMETのI_3などの線形陰イオン塩には液体窒素温度以下の低温まで金属的な挙動を示すものが多く,本度年は圧力下での電気物性の測定を行った。AuI_2塩では液体ヘリウム温度以下まで金属的挙動を示したが,新たな超伝導体の発見には至っていないDMETの誘導体で同じ数のSeとS原子を含むEDTMを合成することができた分子内のクーロン反発の大きさはDMETに比べて大きいなど分子設計の段階で考慮できなかった点などがあるが,I_3塩などでは20K以下まで金属的挙動を示すなど新しい超伝導体の発見につながる可能性がある。フラーレン超伝導体に関してはドープする金属の量および均一性など問題点が残されていたが,金属アジドを用いることでC_<60>K_2Cs_1の超伝導体積がほぼ100%のものが得られた。この方法は超伝導機構の解明および新たな超伝導体の発見に役立つと考えられる。BEDT-TTF等のドナーを用いて多数の錯体を作成し,特に超伝導体に関しては詳細な物性評価を行った。前年に得られた2種の超伝導体κ'-(Bedt-TTF)_2Cu_2(CN)_3(Tc=3.8K),κ-(BEDT-TTF)_2Cu(CN)〔N(CN)_2〕(Tc=11.2K)の構造的知見をもとにTc=1OK以上の超伝導体を4種輩出しているκ型BEDT-TTF塩に共通した特徴を見いだし,κ型塩の陰イオン層に要求される構造条件を提出した。陰イオン設計による新超伝導体の探索をさらに継続中である。上記超伝導体に対する比抵抗,熱起電力およびESR測定により以前我々が提唱していたTcに対する三次元性の効果が確認された。すなわち層間のπ分子間相互作用の増加に伴いTcは増大する傾向を示した。これに基づき,電子端におけるπ電子密度がBEDT-TTFに比べて大きなBVDT-TTF,BTDA-TTFに着目した。尚上記有機超伝導体の重水素体のTc(12.3K)は常圧BEDT-TTF系超伝導体中世界最高の値である。
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