研究概要 |
細胞の増殖に関しては、ポリオ-マウィルスのDNA複製系をモデルとして再構成系を構築し,関与する蛋白質因子を検索した。G蛋白質の関与は,3T3細胞の特定の増殖因子にのみ応答する変異株を多種作成し,G蛋白質を特異的に失活させる百日咳毒素に特に感受性の高いクロ-ンで,検討を続けている。ラット肝臓の初代培養では細胞密度に依存してG_sまたG_pの2種のG蛋白質が別々に介在することを発見し,その機構の解析を行っている。細胞分化については,HL60細胞の分化に2段階の情報が送られることを見出し,後の情報がG蛋白質を介することを証明した。G蛋白質のリン酸化がCキナ-ゼによって行われることは, ^<32>Pで標識した細胞より免疫沈降させたG蛋白質の放射能含量から証明したが,血小板と好中球でリン酸化の効果に違いがあるという興味深い結果が得られている。低分子量(単量体)G蛋白質については,既に得られているGST1ーHs遺伝子をマウスで2種単離した。rho蛋白質をADPリボシル化するボツリヌスC3毒素の作用を増強する蛋白性因子の単離精製中に,内在性ADPリボシル化酵素を見出し精製中である。3量体G蛋白質の活性調節は依然として重要なテ-マであるが,本年はNDP(ヌクレオシドニリン酸)キナ-ゼによるG蛋白質結合GDPの直接のリン酸化を証明した。生理的基質として低分子量G蛋白質が用いられる可能性がある。毒素感受性をG蛋白質の活性化状態の指標とする試みも着々進んでいる。本来コレラ毒素によってADPリボシル化されないGiが,ある活性状態で毒素感受性を示すという顕著な現象は,いくつかの受容体刺激で見出されるようになった。一方,受容体刺激による百日咳毒素感受性低下を,細胞周期の進行(G_0→G_1初期)に結びつける試みは進行中で,この時G蛋白質に一種の化学修飾が起こる可能性を検討している。
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