太陽フレアを引き起こすエネルギーの源である、太陽表面の磁場のひずみの蓄積過程とその解放機構を総合的にとらえることが本研究課題の目的である。このための観測装置である、「太陽フレア望遠鏡」を昭和63年度に建設し、その後順次、黒点の観測装置、Hα線による彩層観測装置、磁場・速度場観測装置を制作し、平成3年8月に打ち上げられた太陽観測衛星「ようこう」との共同観測を実施している。 フレアに伴う磁場の変化については、1992年2月に起こった中規模のフレアにおいて、コロナループのはっきりした形状の変化と、それに対応した磁場ベクトルの変化の検出に成功した。太陽表面の電流密度もフレアをはさんで減少を示しており、フレアに伴う磁場変化のこれまででもっとも明瞭な証拠を捉えたといえる。さらに多くの例について検証を行う必要があり、現在系統的解析を続行している。 もっと小規模なコロナループの輝度変動は、コロナ加熱の機構を解きあかす鍵となるので重要である。コロナループの小規模・短時間の輝度増加が磁場の変化によって引き起こされているかどうかを解析したが、これについては、太陽表面のガスの流れによる磁場のゆっくりした変化は認められたが、コロナループの輝度増加と同じ速さでの磁場の変化は見いだされていない。 1992年11月に太陽の縁で起こった大フレアについては、Hα線で見えるループプロミネンスと、X線ループが上下方向にずれて観測された。これは、X線を出す高温のループが冷えてHα線を放出するようになるというフレアモデルを指示する結果である。
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