研究概要 |
平成3年度の研究により以下のような成績を得た。 形態学的研究:ヒスタミンに対する抗体を用い,脊椎動物について系統発生学的に検索し,硬骨魚類(アジ)において既にヒスタミン神経系が発達しており,爬虫類(クサガメ)では哺乳類と同様に視床下部後部に限局した細胞体から脳内全領域に神経線維を投射していることが明らかになった。これらの成績は,同時に行った脊椎動物の全ての種について測定した脳内ヒスタミン含量の結果とよく一致した。PETによりヒト脳内ヒスタミンH1ー受容体の分布を検討し,特に大脳皮質に高いことを認めた.また,老化と共にその量が減少することも明らかにした 神経薬理・生理学的研究:微小脳透析法により視床下部からのヒスタミン遊離について検索し,活動期に高い明確な日内リズムが存在することを認め,また,遊離は内耳に対する電気刺激やカロリ-刺激により増加することも認めた。これらの結果から,脳内ヒスタミンが覚醒の維持や動揺病の発症に機能していることを明らかにした。 神経化学・細胞生物学的研究:培養アストログリア細胞に対するヒスタミンの作用について検索し,1型細胞ではH2ー受容体を介してcAMPの増加を,2型細胞ではH1ー受容体を介してイノシト-ルリン酸の蓄積が起こることを証明した. 分子生物学的研究:ウシ副腎髄質からH1ー受容体をcDNAをクロ-ニングすることに成功した.このcDNAは,960塩基からなり,5'末端に107塩基,3'末端に1380塩基の非翻訳領域に挟まれた1473塩基の翻訳領域(491アミノ酸)から構成されていた。本受容体は7個の膜貫通領域を持つロドプシンファミリ-に属し,第3細胞内ル-プが今まで知られている受容体の中で最大であることが明らかになった.ヒトヒスチジン脱炭酸酵素についてもクロ-ニングに成功した.
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