今年の研究は、ミュオンによる元素分析が理論的に高精度であることを前提にTRIUMFにある現在のbeam lineおよびmuonic X-rays detectorで実際に臨床適応することが可能かどうか、又臨床的に用いる場合の問題点をファントムを用いて検討した。最も臨床適応がしやすく、またミュオンによる元素分析による診断が他の診断法より優れている可能性が高い疾患としてoste oporosisを選び、腰部および大腿部のファントムを作成した。今回の実験ではbeamのモーメンタムは104.1Mev/cまで上昇させることができ、6〜7cmの深さまで検査可能であった。detectorは窓の直径が4.85cmのgermanium detectorを用い、beamを直径0.75inchにコリメートした場合、腰椎一検体につき30分〜1時間で組織分析ができ、intensityは十分で臨床適応に耐えうるものであった。腰椎人工骨をアクリル製容器から取り外し、人工骨のみで元素分析を行ったところ、椎体海綿部のみの骨塩量をほぼ正確に測定することができた。残念なことに、この時点でサイクロトロン制御用コンピュータの故障でbeamが止まってしまい、osteoporosisに関するそれ以上の実験は不可能となってしまった。臨床適応の可能性としては、現在のシステムで基本的に可能と思われるが、今回用いたdetectorは立体角が小さく、実際に患者を使った検査では一部位当り2〜3時間かかることが予想されるため、より立体角の大きなdetectorが望まれる。osteoporosisのほかに人口透析による骨及び脳へのアルミニウム沈着症のモデルも作成し実験を行ったが、現在あるdetectorは微量のAlを検出することは不可能であった。Al、Hg、Pb、Cdといった微量な金属を検査するためには、より立体角が大きく、high energyのmuonic X-raysに対してより高精度のdetectorが必要である。なお、本年5月に追加実験の予定である。
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