研究概要 |
本研究では、急速に高齢化社会を迎えるわが国において、1.我が国の住宅条件及び全体的な居住環境は、効果的で効率的な在宅ケアを可能とする状態にあるかどうか、2.今後高齢者の在宅ケアを一般化するにあたってどのような住宅や居住環境が必要とされるか、3.効果的で負担の少ない望ましい高齢者在宅ケアの普及を実現するためにはどうしたらよいか、という問いに対して、具体的に答え現実的な指針を提示することを目的とした。この目的を達成するために、医学・看護・建築・福祉の各専門領域の研究者により、集中的な討議と討議に基づく調査研究を行い、さらに総合的な検討を重ねた。尚、「居住環境」は健康のために必要な全てのサ-ビス・施設・設備を含むものである。主な調査研究の項目は、1.都市部に居住する70歳以上の高齢者8,000人(層化無作為抽出)を対象とした健康状態と居住環境に関する郵送質問紙調査、2.身体機能と居住環境の詳細を測定する訪問調査、3.住宅改造が高齢者の健康に及ぼす影響に関する継続的測定・評価,4.高度稠密巨大都市における保健指標,社会指標の分析、であった。以上の結果、1.高齢者の在宅ケアを一般化するには,住宅の中だけでなく、屋内から屋外へ出るまでの設備、道路、公共交通機関及び公共建物等の設備が高齢者の利用に適合するものでなければならないこと、2.障害の重い高齢者の健康水準の改善には、住宅構造のみの寄与度が低く、介護者のためのマンパワ-が不可欠であること、3.中等度から軽度の障害をもつ高齢者の健康水準の改善については、住宅改造に加えて、適切な運動処方と医療・保健・福祉サ-ビスの供給が必要であること、4.高齢者の在宅ケアには、諸サ-ビスのネットワ-クにより生み出されるソ-シャルサポ-トシステムが重要な要素であり、従来の縦割枠にとらわれない柔軟な組織の運用により、実質的なネットワ-クを機能させる必要があること、が結論として得られた。
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