研究課題
1.金剛峯寺蔵の中尊寺経4296巻のうち、440余巻について調査・撮影を実施した。(1)各巻の表紙、見返絵・巻末は6×12サイズでカラー・モノクロ撮影を実施した。(2)350余巻の全図マイクロ撮影を実施した。(3)各巻の調書を作成し、見返絵の形態分類を行いつつ、絵画史・書道史・仏教学その他各分野からの検討を加えた。2.各巻に関する調査データを、パーソナルコンヒュータ(PC9801CV21)に入力し、データの蓄積を行った。3.中尊寺経調査は全て高野山霊宝館にて行ったが、随時中尊寺経に関する図像資料や関連史料の収集に努めた。4.調査の結果、見返絵に関しては霊山説法図・樹下説法図が圧倒的に多いものの、中に僧形説法図や鳳凰図・菩薩説法図・山水鳥獣図・山中修行図・海難図など珍しい図柄が含まれていることが判明した。また、経文の方は、写経にかなりの人数が動員されていることがわかり、金銀交書の場合、金銀字を双方とも同じ人物が手がける時と、金字と銀字とを別の人物が書写する時もあることが判明した。5.華厳経第22には今様歌の墨書のあることは知られているが、華厳経の他の巻にも新しく墨書のあることが発見された。これについては次年度の調査時に赤外線撮影等で解読する予定である。
