研究課題
本年度は次の研究を実施した。(1)瀬戸・赤津焼実態調査赤津焼では、伝統的な良質の陶土と多種類の釉薬を用いて、日用食器を中心に茶器、花器などの生産も行なっているが、焼成はほとんどガス窯に頼っている。販路は窯元と作家とで異なるが、共通点は問屋卸商、小売店が断然多いことで、流通経路が確立されており、昨年度調査した備前焼、萩焼で、自家販売が多かったのとは対照的である。窯元、作家の出身地はその大半が地元であり、地元以外が多い一昨年調査の笠間焼の場合とは逆になっている。この点は焼き物を選んだ理由についても同様で、笠間焼では「焼き物が好きだから」という積極的理由が過半数を占めて多いのに対して、赤津焼では逆に「跡つぎだから」などの消極的な理由の方が多い。従って仕亊に対するやりがい感も他産地に比してやや低くなっている。しかし、だからといって必ずしも伝統意識が特に強いわけではなく、過半数の者は「伝統を踏まえて、新しい感覚のもの」を造りたいとしており、備前焼、萩焼に比べれば、「伝統にこだわらず、新らしい感覚のもの」という者が多い笠間焼に近い。(2)焼き物産地の比較研究民芸調と新らしい傾向が混在した益子焼、脱伝統的な笠間焼、無釉の焼き締め陶器という日本的な伝統色の濃い備前焼、茶陶の伝統を生かす萩焼、桃山陶の伝統を大衆化した赤津焼、以上の5産地を比較すると、さまざまな点における特徴が挙げられるが、その中でいくつかの共通の変化の傾向、すなわち現代化ともいえるようなことが指摘される。その重要な1つとしては、窯元の減小と作家の著増がある。そしてそれに伴う焼き物そのものの変化と、それを使用する消費者の側の変化が挙げられる。
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