研究課題
総合研究(A)
わが国の伝統工芸焼き物産地について、次のような現代的傾向が指摘される。まず経営の形態について、製品は職人に作らせ自らは経営に専念する事業家的性格の強い窯元の停滞と、自と作品の制作に当る芸術家的志向の強い陶芸作家の著増が見られる。これは、自分の考えていることを作品として十分に表現して見たいという現代の陶芸志望者の美的志向の価値観によると共に、職人志望者の減少と賃金の高騰その他により窯元という形態の維持が難しくなったことによるものと思われる。したがって、生産の維持も窯元は雇用従業員中心であるが、作家は家族従業者中心となり、製品や作品の流通面についても、窯元が問屋卸商や小売商への販売となるのに対して、作家では自家販売や個展がその特徴となっている。生産、技術についても大きな現代的な変化が生じている。材料となる陶土については、従来各産地でそれぞれ特徴のあるものが用いられてきたが、それらの産地とは異なる土地でそれらの陶土を取り寄せて作陶するということが多くなってきている。たとえば、東京の八王子で信楽風のもを焼くとか、極端な例では笠間焼のの産地で備前風のものを焼くというように。成形については電動ろくろが普及しており、ほとんど100%これに頼っているといつてよい。また、1部大手の窯元では成型桟が導入されて桟械制生産が行なわれている。焼成については、製品の特徴自体が松薪窯によらないと現出しない備前焼のような産地は別として、ガス窯、電気窯、重油窯といった、焼成の條件を人為的にコントロ-ルし易い窯への切りかえが進んでおり、これらの窯が100%に近いという産地も存する。
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