研究課題/領域番号 |
63301045
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
関本 照夫 東京大学, 東洋文化研究所, 助教授 (20110083)
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研究分担者 |
福島 真人 東京大学, 東洋文化研究所, 助手 (10202285)
富沢 寿勇 静岡県立大学, 国際関係学部, 助教授 (70180164)
船曳 建夫 東京大学, 教養学部, 助教授 (90165457)
内堀 基光 一橋大学, 社会学部, 助教授 (30126726)
大林 太良 東京大学, 教養学部, 教授 (20012263)
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キーワード | 国家形成 / 大衆文化 / 伝統の再編成 / ナショナリズム |
研究概要 |
本年度は研究課題のうち特に国家研究に対して、文化人類学の立場から理論および個別研究の両面に関して議論をおこなった。インドネシア、マレーシア、ポリネシア、ミクロネシアのケースを元に、国際的、地政学的な諸関係の結束点としての、法的なレベルでの国家形成と、人類学的な、日常経験に現出する「国家的なもの」との間を埋める諸装置について発表がなされた。こうした装置の具体例としては、ある国家が一つの必然的な総体をなすというイデオロギーを正当化する国家的神話-歴史、とりわけインドネシアに代表される多民族、多文化国家では、それぞれの民族の代表としての「英雄」が認定され、それらの共同作業による国家形成という物語が標準的なバージョンとして教育される事、国家的に再定義された宗教および伝統、それらを支える政府機関とその定義をめぐる長い論争などが挙げられる。しかしこうした諸装置は、比較の範囲内ではインドネシアにおいて最も自覚的に形成され、国家五原則(パンチャシラ)に代表されるように、ある特定民族集団の文化を越えた象徴を作り出す方法へ向かう。しかしマレーシアに於いてはサラワクとマレー半島、あるいはマレー系と中国系を結び付けるための装置に限界があり、さらにオセアニアの事例では、国家形成に関する地政学的な圧力の相対的な脆弱さ、小規模な社会であり、地理的に分散している事、あるいは文化的な同質性といった状況とあいまって、上記の諸装置の形成は微弱で、寧ろかなり異なる問題、即ちアメリカ等への文化的な同化、あるいは人口流出による国家基盤そのものの不安定化といった問題がより顕著である。こうした媒介諸装置についてはニューギニアやフィリピンの事例が更に検討される予定であるが、来年度は国家形成に伴う大衆文化の意味論的な分析わ加える事によって、国家的な経験そのものが人々に現出するその過程自体がより綿密な討論の対象になる。
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