研究課題
63年度中、蓮成院本類聚名義抄を底本としての読解作業をほぼ予定どおり進める事ができた。上巻70丁からはじめ、二月までに中巻32丁まで、計37丁分、月平均3丁半読めた。その間、種々の点につき新見を得た。例えば、字体規範の概念、正俗通等が果してどういうことか、或る程度の見通しを得た。又、書写者の書写態度につき、蓮成院本に限らず、観智院本においても、これをじっくり読むことにより、その心理のあやを見ることができる。書写の方法も、最初から親本をそっくり写していくのではなく、一定の様式のあることがはっきりした。文字配列には、後の点画小異と似た方法のあることを見出した。これにより、一連の文字の内、どれどれが同じで、どれが別字として扱われているかの判別に一つの基準が得られた。但し、書写者には必しもその意識があったとは言えず、徒に同字を並べ、混乱している様子も看取される。更に、和訓中には種々あり、その原資料を反映している事は周知であるが、その内には定訓と見るべきものが、色葉字類抄の場合同様、第一訓に見られる場合の有ることが知られる。時に多義をもつ和訓に、重ねて漢字の注(漢字訓)をもつものがある。それらから、定訓を、一方では常用漢字的なものが得られることが、名義抄読解を通じて知られた。一方、電算機による入力は、名義抄注解のための各種索引の作成を目指したものであるが、当初の計画を若干変更し蓮成院本全体を丸ごと入力し、それをもとに索引を作成することとした。入力方法につき種々検討しその最終的様式が定まったので、現在、精力的に入力中である。来年度早期にこれを終了し読解に役立て、形式を整えて索引形式で出版したい(フロッピー版または印刷によって)。報告書作成段階には、その一部を公開したいと考えている。
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