研究課題
総合研究(A)
昭和63年度から平成元年度にかけ、蓮成院本類聚名義抄を底本としての読解作業は、上巻70丁から下巻26丁まで、計67丁分すすめた。予定より若干すくないが、電算機入力分校正に伴ひ、再び疑問点を検討するのに時間を要した為であり、結果的には研究の基礎固めに有意義であり、今後の読解に役立つことであった。読解作業に伴って種々の新見を得た。例へば、字体規範の概念、正俗通或等が果していかなるものか、或る程度の見通しを得た。中国辞書によるものと、それと相反するものとがある。かういふ点をも理解した上で、書写の実態について細かく観察すると、底本のみならず、観智院本においても、その書写はかなり杜撰な点が見られる。これは既にこの親本となったものにおいて生じてゐたものもあり、後の辞書に見られる点画小異といった規準で並べられたものなど、その規準を理解し得ぬ書写のあった事も知られる。更に、いくつかの点で、その使用に際して、注意すべきことも知られた。その為にも出来るだけ早く本研究を完成させ名義抄注解を成書としなければならぬことを痛感した。その点、蓮成院本といふ制限はあるものの、その全体をデ-タベ-ス化し得たことー一但し、非JIS漢字の処理等懸案ありーーは爾後の読解に威力を発揮するものと思ふ。この2年間ーー準備期間を入れれば5年間ーー入力方式について試行を重ねた上、全部を一つの方式によって入力し得たことは、問題は残るが古辞書研究に電算機を導入出来たもので、今後活用しなければならぬ。その為に、これをテキストファイル版として公開する予定である。そして、更に、観智院本について同様のデ-タベ-ス化が必要で、それは注解作業と相待って、名義抄の利用価値を高からしめるものとなることを期待してゐる。
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