研究課題
研究計画の機材を購入し、研究活動に活用した。研究資料の入力については、外注・アルバイトを利用して当初計画のデ-タ化に取り組んだ。とくに、初期新高ドイツ語コルプスの機械可読化を積極的に進めた。こうしてデ-タ化した資料に必要な指標を付与して分類していくことが、本研究の課題の一つであった。コンコルダンツ作製はその第一段階となる重要な作業であるが、膨大な資料の処理に際して、いくつかの困難な問題があった。中世・近世ドイツ語は正書法が確立していないため同音異語になるケ-スが多く、単純な機械処理では十分な分析結果が得られない。これを克服するために、デ-タに統語論的な標識を付して、ある程度機械的に識別する方法を模索・検討した。しかし、統語論的にも揺れの大きい時代の言語資料を扱うには、この方法でもまだ無理があった。現時点では、まず資料を文献学的に精密に解析してコンコルタンツ形式の骨格を作り、その結果から逆に機械処理の可能性を追究するのが最善の方法と思われた。こうした基本認識と研究分担者間の議論を踏まえて、別冊の研究成果報告書を刊行した。報告において、中島・山本両名はVeldekeのEneideのコンコルタンツ作製に際しての試行錯誤の経過と古典的手法による作製モデルを示した。藤代は初期新高ドイツ語の時代区分、概念規定などの基本問題を、新しい学説と擦り合わせつつ検討した。萩野は、複合的な動詞形態を広義の複合動詞と捉え、その通時的研究のための予備的考察を行った。福本は文学史の観点から、ドイツ語の文字形式の変遷と正書法確立の過程を考察した。岡田は初期新高ドイツ語の語順の問題をとりあげて分析した。なお、本年度夏に東京で開催される「国際ゲルマニスト大会」において、研究代表者中島が中世ドイツ語セクションの座長を務めるが、その場で本研究の研究方法と結果を討論できることは、研究の進展に大きく寄与するものと思われる。
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