研究課題
本年度は福岡に本社を置く大企業従業員を対象とする企業への帰属意識と地域意識の調査をおこなった。7社を対象として、従業員の企業への帰属意識と、これまでのパーソナルヒストリーとしての地域異動の経験などがどのような関係にあるかについて、質問紙調査によって意識レベルで先行研究との対比がおこなわれた。この結果は、先行研究とかなりの差異があることが明らかになった。さらに、この企業帰属意識には、成員の地域異動経験がかなり影響しており、異動を経験した者は先行研究と類似の帰属意識を示したのに対して、異動経験の無い者は、その企業への帰属が没入的であり、福岡の企業に勤務するという条件が絶対的であるという傾向が示されている。つまり、企業帰属以前に地域への帰属が強い条件として働いているという可能性が示唆されているといってよい。これまでの帰属意識研究がこのような地域性を考慮していないことは明らかであり、このような研究が産業構造の転換による雇用調整に地域性を加味しなければならない点が明確になったといえる。つまり、地域の移動を伴う雇用の移動を受容する層とそうでない層があり、生活基盤の移動を受け入れるか否かの決定がどのようになされるかという点を明らかにしなければならない。さらに先行研究で明らかにされた、日本の企業従業員の帰属はこれまでの通説のような、企業と一体化するというものではなく、いくつかの類型にわかれるという点についても、本研究ではかなり異質な結果が現れている。九州の人間がより古典的なタイプの帰属意識を持っているという点は明らかであり、年齢などの要因での変化も先行研究とは異なっている。次年度以降はこのような点をさらに追及し、九州の地域性を明らかにするとともに、理論的な意味付けをさらに追及する。
すべて その他
すべて 文献書誌 (1件)