研究概要 |
3年計画の最終年度の研究として,次の成果を得た. 1.天北地域では,残存林・再生林の樹齢解析を追加し,この地域のササ地景観が約80年前の山火事を契機に形成され,その後,寒冷・強風という厳しい環境の制約とササの被覆による森林種の侵入阻止とが相まって,現在に至るまで森林の再生が阻害され続けていることを確認した. 2.磐越の多雪地域では,なだれとクリ-プによる積雪移動が,荒廃斜面の形成・拡大の直接の原因であるとともに,植生の回復を妨げる最大の要因となる,というプロセスをモデル化することができた. 3.瀬戸内西部の山地流域を例に,森林火災による斜面荒廃が河道→河口・沿岸域に至る河川システムにおける地形変化過程に対して,累積的・遅延的効果を与えることを明らかにした. 4.松尾・吾妻鉱山,足尾山地,草津白根山の場合を例に,自然並びに人為による荒廃景観の形成・拡大・維持並びに修復のプロセスを比較し,両者に見られる共通性と個別的特徴とを明らかにした. 5.初年度に立てた『自然及び人為インパクトにより無立木地ないし荒廃景観が出現した場合,寒冷地域並びに亜高山帯では,より寒冷な地域に出現する草本・潅木種(寒冷適応種)が先駆群落を形成して疑似寒冷景観ないし疑似高山景観をつくる.一般の山地・丘陵地では乾燥適応種の先駆植物群落の侵入により疑似半乾燥景観が現出する』,という作業仮説の普遍性を,多くの事例により検証することができた. 6.我が国の荒廃景観を成因・形成年代により類型化し,サバンナ化・砂漠化の過程等と比較討してグロ-バルな位置づけを試みた.
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