感覚情報処理の素過程に関する比較解析

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63304005
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 山口 恒夫 岡山大学, 理学部, 教授 (60000816)
• 研究分担者: 立田 栄光 九州大学, 理学部, 教授 (10037179) ; 千葉 喜彦 山口大学, 理学部, 教授 (30004310) ; 廣澤 一成 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30009980) ; 渋谷 達明 筑波大学, 生物科学系, 教授 (00015512) ; 下沢 楯夫 北海道大学, 応用電気研究所, 教授 (10091464)
• キーワード: 感覚情報処理 / 視覚情報処理 / 機械情報処理 / 化学情報処理 / 素過程 / 無背椎動物

研究概要

各種の感覚情報について情報処理の素過程を比較解析し、次の諸結果を得た。1.視覚情報処理系: ショウジョウバエの突然変異体rdgAでは光受容膜合成能の低下していること(廣澤)、モンシロショウの感桿微繊毛膜の再生に直結した膜の取り込みが、微繊毛基部の膜陥入、小胞形成、多胞体形成の過程で進行すること(冨永)、イソアワモチの2個の眼外光受容細胞は分光感度が異なり、両者の間には制御シナップスが存在すること(後藤)をそれぞれ見出した。イイダコ網膜では外液のCa^<2+>欠損下でERPが初発見閃光で退化する現象を確認し(大津)、ワモンゴキブリの単眼2次ニューロンの応答特性を明らかにした(立田)。また、ザリガニ脳内視覚性スパイク非発火ニューロンの力刺激に対する応答特性(山口)とハエトリグモの定位行動を指標にして後側眼の運動検知機構を明らかにした(山下)。さらに、センチニクバエの形態弁別機能の発達には、羽化直後最低5時間の光経験と、それに続く最低5時間の神経活動が必要であることを突き止めた(三村)。一方、イソガニ複眼の感桿容積の変化には体内時計が密接に関係していること(江口)。コオロギ視葉光感覚ニューロンには主観的夜の前、後半部の光照射で応答位相の後退と前進が現われるが、主観的昼の中頃での光照射では変位の現われないことを明らかにした(千葉)。2.機械情報処理系: コオロギの気流感覚系では、神経切断後に再編成される信号経路は、既存の弱い経路が転用されること(下沢)、ザリガニ尾扇肢運動系では下行性平衡胞感覚情報の入力様式(高畑)、ダンゴムシでは伸展受容器のタイプとその分布様式(山口)をそれぞれ明らかにした。3.化学情報処理系: ゴキブリのケニヨン細胞の形能とフェロモンに対する応答性(渋谷)を明らかにすとともに、キイロショウジョウバエの〓節糖受容器からのスパイクの誘導に成功した(白石)。

研究成果

• [文献書誌] Okada,Y.;T.yamagauchi.: J.Comp.Physiol.A. 162. 705-714 (1988)
• [文献書誌] Yasuyama,K.;T.Kimura.; T.Yamaguchi.: Zool.Sci.5. 767-780 (1988)
• [文献書誌] Kimura,T.;K.Yasuyama.;T.Yamaguchi.: J.Insect Physiol.(1989)
• [文献書誌] 下澤楯夫: 日本機械学会第666回講習会教材. 59-64 (1988)
• [文献書誌] 下澤楯夫: 日本ロボット学会誌. 6. 240-244 (1988)
• [文献書誌] Kimura,K.I.;T.Tanimura;T.Shimozawa.: Zool.Sci.6. (1989)
• [文献書誌] Toga,T.;M.Takahata;M.Hisada: Jornal of Experimental Biology.
• [文献書誌] Inouchi,J.;T.Shibuya.;T.Hatanaka: Appl.Ent.Zool.23. 167-179 (1988)
• [文献書誌] Hatanaka,T.;T.Shibuya.;J.Inouchi.: Comp.Biochem.Physiol.91. 377-385 (1988)
• [文献書誌] Kurihashi,T.;T.Shibuya.: Zool.Sci.6. (1989)
• [文献書誌] Hatanaka,T.;T.Shibuya.: Comp.Biochem.Physiol.92. (1989)
• [文献書誌] Kurahashi,T.; T.Shibuya.: Brain Res.(1989)
• [文献書誌] 渡辺明彦・渋谷達明: 化学と生物. 27. 150-157 (1989)
• [文献書誌] Hirosawa,K.;Y.Kokubo;Kitamura.M.;Shiraishi,T.: J.Electronmicros.37. 219-288 (1988)
• [文献書誌] Matumoto,E.;Hirosawa,K.;Takagawa,K.;Hotta,Y.: Call Tissue Res.252. 293-300 (1988)
• [文献書誌] Morioka,K.;K.Hirosawa.: Ophthalmic Res.(1989)
• [文献書誌] Fujitani,Y.;H.Sawada.;K.Hirosawa.: J.Electromicros.(1989)
• [文献書誌] Arikawa,K.;Y.Morikawa.;T.Suzuki.;E.Eguchi.: Experimentia. 44. 219-220 (1988)
• [文献書誌] Suzuki,T.;Y.Maeda,;Y.Toh.;E.Eguchi.: Vision Res.28. 1061-1070 (1988)
• [文献書誌] Ohtsu,K.: Zool.Sci.
• [文献書誌] Sakairi,K.;M.Yamamoto,;K.Ohtsu.;M.Yoshida.: Zool.Sci.
• [文献書誌] 大津浩三: 動物生理.
• [文献書誌] Tomioka,K.;Y.Chiba.: J.Insect Physiol. 35. (1989)
• [文献書誌] Tomioka,K.;Y.Chiba: Zool.Sci. 6. (1989)
• [文献書誌] Chiba,Y.;M.Yoshii.;Y.Yamaomto,;K.Tomioka.;S.Y.Takahashi.: In"Host Regulated Developmental Mechanisms in Vector Arthropods"(ed.D.Brovsky and A.Spielman). 199-205 (1989)
• [文献書誌] Mizunami,M.;H.Tateda.: J.Gen.Physiol.91. 703-723 (1988)
• [文献書誌] Komiya,M.;S.Yamashita.;H.Tateda.: J.Comp.Physiol.163. 585-592 (1988)
• [文献書誌] Mizunami,M.;H.Tateda.: J.Exp.Biol.
• [文献書誌] Shiraishi,A.;K.Koga.;T.Tanimura.: Zool.Sci.5. 1192 (1988)
• [文献書誌] Nakahara,T.;A.Shiraishi,;M.Hirano,;T.Matsumoto,;T.Kuroki,;Y.Tatebayashi,;T.Tsutsumi,;K.Nishiyama,;H.Ooboshi,;K.Nakamura,;H.Yao,;M.Waki,;H.Uch,: Analytical Biochemistry. (1989)
• [文献書誌] Mimura,K.: Brain Research.445. 228-233 (1988)
• [文献書誌] Gotow,T.: Brain Research. 479. 120-129 (1989)
• [文献書誌] Gotow,T.: Comparative Biochemistry and Physiology. 91C. 75-78 (1988)
• [文献書誌] Nishi,T.;T.Gotow.;M.Kobayashi.: The Journal of Experimental Biology. 135. 183-191 (1988)
• [文献書誌] 下澤楯夫: 現代動物学の課題7「行動」 逃避行動の神経学. 1989. (81-124)
• [文献書誌] 渋谷達明: 「感覚中枢における情報処理」(化学総説「バイオセンシングとそのシステ」). 1988. (53-65)
• [文献書誌] 渋谷達明: 「昆虫における感覚情報の脳内処理機構」(技術開発年鑑「昆虫科学」). 1989.
• [文献書誌] 倉橋隆・渋谷達明: 嗅細胞の匂情報交換イオンチャンネル(「匂いの科学」). 1989.
• [文献書誌] 渋谷達明・神崎亮平: 「昆虫の嗅覚中枢の情報処理」(匂いの科学」). 1989.
• [文献書誌] 高木貞敬・渋谷達明 編: 匂いの科学(分担項目:昆虫の嗅覚器の微細構造).