研究概要 |
濃核病ウイルス,DNVーI(伊那株)及びDNVーII(山梨株・中国株)の主としてウイルス構成タンパク質と核酸について研究し、下記の結果を得た。 1.中国株ウイルスの2種類の核酸の長さを決定した。即ちDNAー1は6.56Kbp,DNAー2は6.07Kbpであった。 2.中国株DNVを消石灰飽和水溶液に浸漬すると、5分後には粒子が変性、崩壊したが、一部の粒子は変形することなく集合して残留した。このウイルスを蚕に経口投与したが感染性はなかった。残留した粒子は核酸の制限酵素地図及びサザンハイ・ブリダイゼ-ションによりDNAー1であることを明らかにした。DNVーIIは2形の粒子を有し、両者により、宿主細胞への感染が成立することが推察された。 3.中国株DNVのDNAー1(6.56Kbp)の全遺伝子をホモポリマ-結合法により、pUCl9プラズミドにインサ-トし、クロ-ン細胞を得た。 4.山梨株と中国株DNAのそれぞれのゲノムDNAにおける制限酵素地図の解析から、DNAー2の塩基配列は殆ど同じであった。しかしDNAー1には相違が認められたが、その末端構造は極めてよく似た塩基配列をしていることを明らかにした。 5.山梨株DNVの構成ポリペプチドは53,51,49,46.5Kであった。この内、51,49及び46.5Kポリペプチドは中腸細胞で生成され、その生成は中性からアルカリ性で促進される。 6.伊那株DNVー1のDNA、4.9Kbpをクロ-ニングして、完全長のウイルスDNAをpUCl19プラズミドにインサ-トして、クロ-ンを得た。そしてクロ-ンから全塩基配列の5048ヌクレオチドを解折できた。 7.2種の昆虫培養細胞系から、それぞれ20nmの球形ウイルス(単鎖DNA)と直径22nmの球形ウイルス(RNA)とが持続感染していることを明らかにした。
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