研究課題/領域番号 |
63304018
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
村井 宏 静岡大学, 農学部, 教授 (50126786)
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研究分担者 |
志水 俊夫 農林水産省総合研究所, 森林環境部, 研究室長
石井 正典 岩手大学, 農学部, 助教授 (30003776)
井上 克弘 岩手大学, 農学部, 教授 (30035109)
角張 嘉孝 静岡大学, 農学部, 助教授 (60126026)
伊藤 忠夫 静岡大学, 農学部, 教授 (00144056)
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キーワード | ブナ林 / ヒノキ林 / 林分の水循環 / 林内雨量 / 樹幹流下量 / 蒸発量 / 蒸散量 / 土壌水分 |
研究概要 |
富士山麓のブナ天然林とヒノキ人工林に試験区を設定し、林分の水循環に関する諸要素の観測を、1989年5月から同年11月までの期間実施した。観測項目は、林内外雨量、林内外蒸発量、樹幹流下量、蒸発散量、土壌水分量および土層透過水量等である。また、これと併行してそれぞれの捕捉水のpH等水質も分析した。本観測期間中の降雨総量は、約2500mm、降雨回数78(間断期間は5時間)であった。この結果を次に要約する。 (1)うっ閉した複層のブナ天然林の降雨配分は、林内雨量66%、樹幹流下雨量18%、遮断損失雨量16%、正味の到達雨量87%となった。ブナ林は樹種特有の樹型と樹肌から、樹幹流下量は他区よりも明らかに多い。 (2)降雨量と林内雨量、樹幹流下量及び遮断損失雨量等との関係は、前者が増大すると後者も増大する一次回帰式に、概ね適合している。 (3)簡易蒸発計(岡上式)で測定した積算蒸発量は、林外(露場)100%とすると、ブナ林の林床で54%、ヒノキ林の林床で65%となった。ブナ林ではA層が厚く堆積し、常時湿潤であって地床からの蒸発は少ない。 (4)ス-パ-ポロメ-タ-で測定したブナ林の蒸散量は、同期間の積算で約320mmとなり、降雨量の約20%に相当する。この季節的変化をみると8月が最大値を示し、6月には低下する傾向を示した。 (5)テンシオメ-タ-で土壌水分を深さ別に連続測定したところ、ブナ林地はヒノキ林地よりもpF値が常に高く、土壌水分の動態から推定した蒸発散量は、前者は後者よりも50%ほど大きくなることがわかった。 (6)テンションフリ-ライシメ-タで測定した土層の深さ別の透過水量は、ブナ林地よりヒノキ林地が多かった。 ブナ林の雨水中への塩基成分の溶出は、ヒノキ林のものより多かった。雨水のH^+はブナの樹冠、樹幹を通過・流下する過程でかなり中和され、林内雨および樹幹流のpHが高くなった。ブナは酸性雨に中和能を示した。
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