軸索輸送の基礎と臨床の分子生理学的研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63304032
• 研究機関: 横浜市立大学
• 研究代表者: 竹中 敏文 横浜市立大学, 医学部, 教授 (00045999)
• 研究分担者: 千原 悦夫 京都大学, 医学部, 講師 (20111958) ; 藤沢 浩四郎 東京都神経科学総合研究所, 神経病理学研, 参事研究員 (90073064) ; 後藤 秀機 岩手医科大学, 医学部, 助教授 (70046100) ; 小宮 義璋 群馬大学, 医学部, 教授 (50010046) ; 廣川 信隆 東京大学, 医学部, 教授 (20010085)
• キーワード: 軸索輸送 / キネシン / 化学伝達物質 / 培養細胞 / 緑内障 / 遊離神経移植

研究概要

軸索輸送に関与する蛋白質の構造、その生理学的機能そして臨床面での応用について研究をした。動的蛋白質キネシンの分子構造を広川は抗体による分子修飾法と急速凍結法をもちいて解析し、微小管及び膜との結合部位を同定し、重鎖、軽鎖の分子内での位置を決定した。また、MAP2蛋白の樹状突起局在の機構を微量注入法を用いて解析し、軸索の細胞骨格に組み込まれない為に軸索から特異的に失われる事を示した。竹中、後藤らは、化学伝達物質の軸索輸送に及ぼす効果を研究した。GABAは後根神経節の細胞の軸索輸送を一過性にとめる。そしてこの効果はビキュキュリンで消失したので、GABAのA受容体に依るものと考えられる。小宮らは薬物の軸索輸送に及ぼす効果を研究した。Taxolはチューブリンとアクチンの輸送を注入部位でほぼ完全に阻害するが、ニューロフィラメントの輸送は阻害しない。注入部位のアクチンの輸送阻害は速やかに回復するが、チューブリン輸送の回復は7週間以上もかかる程おそい。病態生理学的研究は藤沢らが行ない、軸索のSynapse前終末に特異的に生じる軸索dystrophyの超微構造的特徴を検討し、その結果、軸索内に通常存在する殆んど全ての小器官及び無構造の軸索形質が蓄積してくるが神経細繊維だけは増加を認めなかったと報告した。臨床的研究としたは眼科と形成外科との分野から研究をすすめた。千原は緑内障はびまん性神経脱落がおこっており、局所的脱落を認める虚血性障害と対比を明らかにした。光嶋らは、神経移植後の軸索輸送される蛋白質を研究し、正常のもの以外に新しい蛋白質が運ばれていることをみつけた。そしてこの新蛋白質のあるものは神経移植された細胞において合成されていることも調べた。今後、以上のように基礎的研究者と臨床研究者とが協力を続け成果をあげるようつとめる。

研究成果

• [文献書誌] Takenaka,T.: J.Membrane Biol.106. 141-147 (1988)
• [文献書誌] Horie,H.: Brain Research.477. 233-240 (1989)
• [文献書誌] Hikawa,N.: Brain Research.481. 162-164 (1989)
• [文献書誌] Hirokawa,N.: Journal of cell Biology.107. 1449-1461 (1988)
• [文献書誌] Okabe,S.: Journal of cell Biology.107. 651-664 (1988)
• [文献書誌] Hirokawa,N.: Journal of Cell Biology.108. 111-126 (1989)
• [文献書誌] Komiya,Y.: Cell Motility and The Cytoskeleton.11(3). 151-156 (1988)
• [文献書誌] Fujisawa,K.: Acta Neuropathologica(Berlin). 76. 115-127 (1988)
• [文献書誌] Kazui,H.: Neuropathology and Applied Neurobiology. 14. 137-156 (1988)
• [文献書誌] Koushima,I: Journal of Hand Surgery.13. 29-32 (1988)
• [文献書誌] 竹中敏文: CLINICAL NEUROSCIENCE別冊. 7. 19-21 (1989)
• [文献書誌] 竹中敏文: 生体の科学. 39. 496-499 (1988)
• [文献書誌] 後藤秀機: "生理、薬理学実習書" 広川書店, 9-12、378-380 (1988)
• [文献書誌] 後藤秀機: "神経と化学伝達" 東京大学出版会, 1-134 (1988)