ウィルス性リンパ節炎の発生機序の解明に関する研究-特に日本人における特徴-

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63304035
• 研究機関: 福島県立医科大学
• 研究代表者: 若狭 治毅 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (30004568)
• 研究分担者: 三方 淳男 千葉大学, 医学部, 教授 (40051289) ; 花岡 正男 京都大学。ウィルス研究所, 教授 (30027304) ; 森 茂郎 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30010424) ; 白川 茂 三重大学, 医学部, 教授 (20026850) ; 南嶋 洋一 宮崎医科大学, 医学部, 教授 (80041284)
• キーワード: ウィルス性リンパ節炎、壊死性リンパ節炎 / 木村病 / 副皮質増生性リンパ節炎 / AIDS

研究概要

リンパ組織の反応性疾患には発生機序や要因の解明されていないものが多く、ウィルスの持続感染が疑われるものも少なくない。
本研究班はリンパ組織に主座をおく壊死性リンパ節炎、木村病、副皮質の増生症やエイズ病変の成り立ちに焦点をあてて検索した。壊死性リンパ節炎の血清からインターフェロンによって誘導される2-5オリゴアデニン酸合成酵素が初期において上昇することやHuman herpes virus-6抗体陽性例などが確かめられてきているが、これを病因と確定するにはいたっていない。HLA-typingではA11が本症罹患々者に有意に高いことも確かめられ、本症が日本人に多いことの足がかりをえた。
定型的軟部病変を主とした木村病につき、再発例のリンパ節を検索した処、リンパ節は軟部組織と同様の病変を呈することから、リンパ節病変も木村病による同一機序によるものとみなすことができた。木村病の成り立ちとIgEとは関連があり、腫瘤摘出後にIgEの低くなることも確認されているがFcεとの関係は今後に残された。
副皮質増生症の中には遺伝子解析により再構成のみとめられたことから、Tリンパ腫との初期像との鑑別が重要であり、その組織像の特徴を十分に明らかにすることが必要とみなされた。
エイズにおける胚中心細胞の崩壊がHIVのTh/i細胞に対する直接作用によるか、組織球を経てから起こるものかを明らかにするため組織球マーカーを用いて検討した。T領域組織球が一義的とはみなせず、やはりTリンパ球の減少が重要と考えられた。
その他、T領域組織球に対する単クローン抗体の作製、RL focus(monocytoid B細胞)の性状の解明、Tβr,Tεr陽性細胞の分布を明らかにしたことなど、リンパ組織の基本病変を理解する上に大きな進歩があった。

研究成果

• [文献書誌] 若狭治毅、村松尚夫: 癌治療、今日と明日. 10. 21-25 (1988)
• [文献書誌] Abe,M,;Nozawa,Y.;Wakasa,H.;Ohno,H.;Fukuhara,S.: Cancer. 61. 483-490 (1988)
• [文献書誌] 浅野重之、赤池康、松村尚夫、陣内弘和、若狭治毅、吉田博、近藤康平、小島勝、城下尚: 病理と臨床. 6. 455-464 (1988)
• [文献書誌] Abe,M.;Wachi,E.;Wakasa,H.: Pathology Research and Practice. 183. 418-424 (1988)
• [文献書誌] Eizuru,Y.;Minematsu,T.;Minamishima,et al.: The Lancet. 1. 40- (1989)
• [文献書誌] Eizuru,Y.;Minamishima,Y.: Intervirology. 29. 339-345 (1988)
• [文献書誌] Mikata,A.: Acta Haematologica Japonica. 51. 1395-1403 (1999)
• [文献書誌] Mizugami,T.;Mikata,A,et al.: Acta Pathological Japonica. 38. 1149-1166 (1988)
• [文献書誌] Ohkawa,H.;Mikata,A,et al: Experimental Hematology. 17. 30-33 (1989)
• [文献書誌] Tokudome,S.;Tokunaga,O.;Shimamoto,Y.;Miyamoto,Y.;Sumida,I.;Kikuchi,M.;et al: Cancer Research. 49. 226-228 (1988)
• [文献書誌] Kaneko,Y.;Maseki,N.;Sakurai,M.;Takayama,S.;Nanba,K.;Kikuchi,M.;Frizzera,G.: Blood. 72. 413-421 (1988)
• [文献書誌] The T- and B-cell Malignancy Study Group: International Journal of Cancer. 41. 505-512 (1988)
• [文献書誌] Ohashi,T.;Nawa,Y.;Minamishima,Y.;Owhashi,M.: Archives of virology. 101. 237-246 (1988)
• [文献書誌] Nakamura,S.;Suchi,T.,et al.: Virchows Archiv A.: Pathological Anatomy and Histopathology. 414. 121-128 (1989)
• [文献書誌] Miwa,H.;Shirakawa,S.,et al.: Jpn.J.Cancer Res.(GANN). 79. 484-490 (1988)
• [文献書誌] 白川茂 他: Medicina 増刊号. 25. 2044-2047 (1988)
• [文献書誌] Mitani,S.;Mori,S.,et al.: Cancer. 62. 2085-2093 (1988)
• [文献書誌] Mori,S.,et al.: Acta Pathologica Japonica. 38. 1205-1214 (1988)
• [文献書誌] 菊池昌弘、竹下盛重: 病理生理. 7. 250-252 (1988)
• [文献書誌] 今井大、松田幹夫: 細胞. 20. 29-34 (1988)
• [文献書誌] 佐藤俊浩、山川光徳、今井大: 日本網内系学会雑誌. 28. 243-256 (1988)
• [文献書誌] Imai,Y.;Yamakawa,M.;Sato,T.: Virchowa Archiv A: Pathological Anatomy and Histopathology. (1989)
• [文献書誌] Ngan,B-Y.;Takagi,K.;Dombronski,D.A.;Dorfman,R.F.: United States and Canadian Academy of Pathology(United States-Canadian Division of the Intermational Academy of Pathology)Ammual Meeting,S.F.March 5-10 1989,Abstracts. 66A (1989)
• [文献書誌] Mori,N.;Oka,K.;Hanada,T.;Iizuka,A.;Kojima,M.: Cancer. 61. 2231-2238 (1988)
• [文献書誌] Mori,S.,et al: Pathology Research and Practice. 184. 53-59 (1989)
• [文献書誌] Kanaitsuka,T.;Ishii,K.;Ashihara,T.;Hanaoka,M.;Namba,Y.: Acta Pathologica Japonica. 38. 1523-1536 (1988)
• [文献書誌] Nishihara,K.;Miyatake,S.;Namba,Y.;Hanaoka,M.;Watanabe,Y.,et al.: Cancer Research. 48. 4730-4735 (1988)
• [文献書誌] Yamasaki,T.;Kikuchi,H.;Yamashita,J.;Namba,Y.;Hanaoka,M.,et al.: Cancer Research. 48. 2981-2987 (1988)
• [文献書誌] Zu,Y.;Tsubai,F.;Namba,Y.;Hanaoka,M.: Cell Structure and Function. 13. 1-11 (1988)
• [文献書誌] Miyatake,S.;Kikuchi,H.;Namba,Y.;Hanaoka,M.,et al.: Journal of Neurosurgery. 69. 751-759 (1988)
• [文献書誌] Mori,N.;Oka,K.;Kojima,M.: American Journal of Clinical Pathology. 90. 143-148 (1988)
• [文献書誌] Mori,N.;Oka,K.;Yoda,Y.;Abe,T.;Kojima,M.: American Journal of Clinical Pathology. 90. 244-249 (1988)
• [文献書誌] 小島勝、石井英昭、伊藤秀明、城下尚、田波洋、吉田カツ江、須知泰山: 病理と臨床. 6. 819-825 (1988)
• [文献書誌] 南嶋洋一、森良一、天児和暢 編: "戸田新細菌学" 南山堂, 1-921 (1988)
• [文献書誌] 南嶋洋一、水口康雄、中山宏明: "現代微生物学入門" 南山堂, 1-380 (1987)
• [文献書誌] 白川茂 他 高久史磨 編: "リンパ球系悪性腫瘍の遺伝子型 Common Disease Series 6 白血病・悪性リンパ腫" 南江堂, 276-284 (1988)
• [文献書誌] 森茂郎: "AIDSの血液病理 Annual Review 血液 1989" 中外医学社, 134-139 (1989)
• [文献書誌] 竹下盛重、三井徹次、岡村秀樹、内藤英明、田代研児、吉田尊久、菊池昌弘、須知泰山 他 編: "血管免疫芽球性リンパ節症 -AILD-IBL型病変" 近代出版, 21-31 (1988)
• [文献書誌] 浦野順文、山口和克、丹下剛、林祥剛、菊池昌弘、竹内正 編: "第17章血液・造血臓器 病理学各論" 日本医事新報社, 99-165 (1989)