本研究では当初の予定に従い、CsI(TI)結晶を用いた大型の気球実験用ガンマ線検出器を設計し、製作した。中心部の検出器は、本研究で開発された大型のフォトダイオードで読み出された。フォトダイオードのスペクトル感度はCsI結晶の発光スペクトルに良く整合するうえ、検出部を光電子増倍管の代わりに大型で低雑音のフォトダイオードで読み出すことができれば検出部をコンパクトにすることができ、それを取り囲むアクティブシールドを大きくできて、全体として有効面積の大きな検出器を作ることができる。 我々は既存のものに比べ4倍の面積を持つ低雑音のフォトダイオードの開発を行った。更に読み出し回路の雑音を下げ、CsI結晶中で生じたフォトンを効率良く集める工夫を行った結果、500KeV以上のガンマ線に対して従来の光電子増倍管によるものに匹敵する分解能を得、我々は世界で初めて、フォトダイオードを使ったCsIシンチレータを実用化したといえる。 検出器は気球実験用の高速のデータ収集システムと組み合わされ、上空42kmにおいて実験が行われた。約8時間にわたってシステムは正常に稼動し、有効なデータを取得することができた。現在そのデータの解析が進められており、検出器の各部は予想された性能を示している。又、これまでの同種の検出器に比べ上空でのバックグランドを数分の一に抑えることができており、バックグランドの多い状況で微弱な信号を検出する際に厚いアクティブシールドで遮閉を行う設計方針の正しさが確認された。
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