研究概要 |
電子・陽電子静止対消滅反応により発生する多数のガンマ線を効率よく測定するために,「多重ガンマ線スペクトロメ-タ-」を製作した。これは球面上に32本のシンチレ-ションカウンタ-を設置し,中心から発生する多数のガンマ線を一つずつ検出できるというユニ-クな測定器で,これまでに存在するガンマ線検出器に比べ100倍以上の検出効率をもつ。さらに,個々のガンマ線の放出角とエネルギ-が決定できることから,エネルギ-・運動量保存則が検定され,その結果,各事象ごとにバックグラウンドを区別することができるという特徴がある。実験では,放射線源として^<63>Geを用い,放出される陽電子を標的(シンチレ-タ-)に導入しポジトロニアムの消滅反応をおこさせる。そこで発生した4個のガンマ線を検出し,電磁相互作用の高次効果(オ-ダー,α^4)およびアクシオン等の新粒子探索を行った。消滅反応により生成する2個および3個のガンマ線は,100万倍にも達し大量のバックグラウンドとなって,観測しようとする4個のガンマ線を覆い隠す。測定器にはコンプトン散乱を抑制する銘シ-ルドを設置してあり,さらにエネルギ-・運動量保存則の検定により,欲する4ガンマ事象(2 例)の抽出に成功した。こうして,世界で初めての4ガンマ事象を観測し,2ガンマ事象との強度比(1.48±0.13±0.12)×10^<-6>を得た。これは,α^4のQEDの予測値(1.4796±0.0006)×10^<-6>ときわめてよく一致している。なお,アクシオン生成を検証するため4ガンマ事象に対して,2ガンマ有効質量を調べたが,特別な徴候を見い全すことはできなかッた。アクシオンを含む新粒子探索には,さらに高い統計精度が必要である。
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