ミクロネシア・ポナペ島で飛揚した特殊TVラジオゾンデ8台のうち3台の解析を終了した。新しい事実が、次々と得られた。予想に反し、赤道の積乱雲には、氷晶に富み、圏界面で直径0.5mm以上で1cm^3当り0.1コ見出された。雲の放射効果を考えるとき重要となる。強い降雨を降らせる積乱雲内には、雹が観測され、雹は雨滴と違って分裂しないので水の集積化をもたらし、豪雨は雹の形成を通して起こっていることが分かった。ここミクロネシアでの積乱雲は、豪雨を降らせるのに雷は少ない。長い間、謎になっていたが、これは霰の空間濃度が、中緯度地帯の積乱雲に比べ、1ケタ少ないためであることが分かった。その他ハワイ・レインバンドの航空機によるデ-タを解析、レインバンドの強さは、周囲の鉛直風が一義的に重要であること、レインバンドの動きは、雨による周囲の風のモ-メンタム輸送によることが知られ、九州に発達する梅雨期末期の強いレインバンドの特異な動きの理解に役に立った。3次元モデルでのレインバンドの数値計算では、長寿命のレインバンドには鉛直風が放物線型であること、下層に温度勾配があることが重要であることが分かった。これらいづれの結果も、1989年気象学会秋季大会(沖繩)で発表した。現在、微物理過程を導入した3次元雲モデルを走らせている。熱帯の雲では、氷晶形成のないWarm Rain型だけで十分強い雨が降る。赤道付近では、逆転層が高く、しかも弱いので高く発達した積乱雲が観測される。そこでは氷晶が形成される。氷晶の降水への役割を数値計算で調べた。氷晶があると、霰形成を通して降水強度が更に強まり、雲の力学場と組み合って、降水も長時間続いた。
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