研究課題
堆積岩の構造形態を主対象として、西南本州弧外帯の秩父帯・四万十帯及び琉球弧の相当諸帯につき現地精査・採取試料の化石による年代と堆積環境・岩石組成等の解析により、次の諸項がほぼ判明した。1.重力構造運動の過程について:段階的に変化する(1)未固結粒子の移動、(2)未〜半固結堆積層の滑動、(3)未固結〜岩石化堆積層に蔽われた基盤の崩壊の3型が認められた。(1)〜(3)は複合することはあっても、漸移関係をもたない。2.諸過程の発生・進行条件について:周辺地域の調査では水平方向の力を生ずる原因は重力に起因するもの以外は見出されなかった。重力によるプロセスはMass-Wasting、-transbortation、-depositionの諸局面をもつ。その発生条件は地表・海底の起伏と堆積面・堆積物の基底面の増傾斜である。(1)は堆積粒子の、(2)は堆積層の、(3)は斜面、とくに大陸斜面の安息角を超えて斜面が増傾斜したときに発生する。増傾斜運動は連続的に進行しても、(1)〜(3)の過程は開値を超えた時に急に起こる。3.各過程による変形と規模について:(1)の結果は狭義の堆積構造で、層内〜層間異常を生じる。水流と純重力の効果は区別し難いものがある。(2)は非対称褶曲とナップを生じるが、その差を生じるのは固結度〜柔軟度によるもののようである。未固結・含水状態の砂・火山灰の褶曲と注入変形は著しく、またこれらと玄武岩は滑動層となり易い。幅数〜十数kmの規模のものが多く認められた。(3)は頂部の破断、先端部の褶曲・衝上断層・隆起、中間部の陥没・沈降を特徴とする後方回転を伴う崩壊を生ずる。規模は多様で、関東地方のほぼ全域にわたるもの、四国全域とその周辺に及ぶものなどの巨大なものから、一露頭内で完結しているものまである。関東地方の変動は鮮新世にはじまり現在に及んでいる点でとくに注目される。
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