本研究の目的は陸上砕屑性堆積物の絶対年代測定法を確立することであった。そこで対象としては、代表的な陸上堆積物である火山灰・風成黄土・淡水棲珪藻土および河床〜湖底砂泥を採集し、年代試料とした。年代測定の方法としては熱ルミネッセンス(TL)および電子スピン共鳴(ESR)法による線量年代測定を選択した。線量測定:試料調製後、高エネルギ-電子線またはX線の照射を行いTL・ESRの信号を測定した。一部の試料は同時に焼鈍実験を行い、蓄積線量評価の精度および確実度を向上させることができた。 火山灰や段丘堆積物などのうち石英の結晶粒を含む試料は、TL・ESR法の一方かまたは併用によって問題なく年代測定を行うことができる。珪藻や火山ガラスのような非晶質の試料は、室温によるESR測定やTL測定では年代測定に適した信号出力が得られなかったが、液体窒素温度によるESR測定では1mWおよび0.01mW以下のマイクロ波出力において、人口照射により増大する信号の検出に成功した。詳細なESR信号種の詳細な同定にはまだ問題があるが、便宜的には実用できると結論された。 線量率測定:一般に線量年代測定法では年間線量の測定精度を向上させることが要請される。本研究ではTLD素子によるガンマ線および宇宙線寄与の原位置測定とガンマ線分光測定による試料の放射能測定を併用した。 本研究の結果、従来、化石・火山岩の年代測定以外には困難とされていた陸上堆積物の絶対年代測定法として線量年代測定が十分実用的であることが検証されたことになる。そこで本研究のまとめとして、事例とともに線量年代測定法の標準手続きを整理した。
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