研究課題/領域番号 |
63420021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小間 篤 東京大学, 理学部, 教授 (00010950)
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研究分担者 |
斉木 幸一朗 東京大学, 理学部, 専任講師 (70143394)
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キーワード | ファンデルワールス・エピタキシー / 超薄膜ヘテロ構造 / 単結晶超薄膜 / ダングリンボンド / ヘテロ界面 / 電子構造 / 表面不活性化 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 雲母 / GaAs |
研究概要 |
本研究においては、研究代表者らが開発したファンデルワールスエピタキシー法により、絶縁物から半導体、金属、さらには超伝導金属と多岐に亙る層状物質の単結晶単層膜を自由に積層して、天然界にはまったく存在しない人工物質を創製し、それが示す新しい物性を解明することをその目的としている。従来ファンデルワールス・エピタキシーは、層状物質である遷移金属ダイカルコゲナイド物質間のように、同種の層状物質間でのみ可能であったが、本年度の研究の進展により、ファンデルワールス・エピタキシー法を以下に述べるような幅広い系にまで応用することが可能となった。まず結晶構造や物性が著しく異なる白雲母の劈開面上に、MoSe_2やNbSe_2の遷移金属ダイカルコゲナイドの成長を試み、格子定数が50%近くも異なるにも関わらず、良質のヘテロエピタキシャル膜が成長することを明らかにした。これにより、硬く大面積で平坦な表面を有する試料が容易に得られる雲母を、ファンデルワールス・エピタキシーの基板とする可能性が拓けた。白雲母は透明かつ良質の絶縁体なので、電気的光学的測定を行なう試料の基板としても優れている。また、硫化物処理したGaAs表面のダングリングボンドがS原子により規則正しく終端され、それが580℃まで安定であることを、電子分光測定により明らかにした。この事実に立ち、6回対称性を有するCaAs(111)面を硫化物処理した後、この上にNbSe_2のファンデルワールス・エピタキシャル成長を試みた結果、界面の第1層から良質のヘテロエピタキシャル膜が成長することに成功した。この成功は、GaAsのような三次元物質基板上にNbSe_2のような二次元物質をヘテロ成長できることを最初に実証した点で興味があるだけでなく、GaAsをベースとするオプトエレクトロニクス素子上に、NbSe_2等の層状超伝導体をベースとする超伝導素子を集積化する可能性を拓いた点で、実用上の意義も大きいと思われる。
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