極超音速輸送機(HST)の巡航マッハ数として経済性の検討から7が妥当であるとの予測が得られた。これに基づいて実験的研究は東京大学工学部航空学科のマッハ数7の極超音速風洞および科学技術庁航空宇宙技術研究所のマッハ数7の極超音速風洞を用いて行われた。従来の各種形状についての実験ならびに数値解析を参考にして、新しいHST形状の設計製作を行いその特性試験および基礎研究を行った。上記の経済性の検討で、HSTの性能向上のための空気力学的課題の重要な点は、所要の容積を持つ形状で必要な揚力を保ちつつ、空気抵抗最小の状態を導くことであることがわかっているので、研究の方針はこの目的に向けられた。空気抵抗の内分けは主として造波抵抗と粘性抵抗であり、前者は機体表面の圧力分布の計測および数値解析で知ることができるが、後者は圧力分布に敏感な境界層の振舞いにより予測が極めて難かしい。両者はほぼ同程度の抵抗を示すので、両者を総合して全抵抗を最小にする設計を行う必要があり、ここに基礎研究の重要性が再認識される。 このような全機模型についての試験と、基礎研究の併行により、従来のHST形状に比して性能の良い形状を得ることができた。これについて得られている揚抗比の最大値は5.5であり、諸外国でも極超音速機についての揚抗比が4を大きく上廻ることは困難とされていることを考えれば、本研究の一つの大きな成果であると考えている。 現在さらに各種形状についての表面圧力分布の測定を行い、計算との比較により今後の改良の基礎を固める研究や、熱空気力学的制御による性能の改善の研究等をすすめている。
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