研究概要 |
大学における基礎研究と科学技術庁航空宇宙技術研究所を使用する性能試験とを並行することにより,多くの有意義な成果を収めることができた。まず基礎研究においては東京大学工学部航空学科極超音速熱風洞を用いて,主として極超音速飛行時(マッハ数7)における空気抵抗の軽減から高い揚抗比を得るための実験的研究を行った。その結果,(1)境界層遷移の生じるレイノルズ数およびその原因となる擾乱の型の研究で,極超音速流では遷移レイノルズ数が高く流れの方向の長さを用いるレイノルズ数が10^6の程度まで十分に層流であること,剥離再付着領域ではしばしば縦渦の発生が観測される,(2)翼胴の干渉部を平滑化することが抵抗軽減に有効である,(3)前縁形状が抵抗軽減に重要である,(4)衝撃波と境界層の干渉を3次元的に研究しなければならない,(5)デルタ翼上面に沿う剥離渦は空力特性にも空力加熱へ重要な影響をもつ,(6)極超音速流の熱的制御を空力加熱と空力特性の両方から考えるべきである,等の成果が得られた。また,数値流体力学の応用により空力特性の推定,表面温度の空力特性への影響の推定等が可能なこともわかった。 つぎにこれらの経験を参考にして,極超音速輸送機の翼胴モデルを設計製作し,その空力特性を航技研の極超音速風洞(マッハ数7)で試験したところ,揚抗比5.5以上が得られた。この値は容積係数(胴体容積を主翼面積の3/2乗で割った値)が役0.1の極超音速機形状としては世界的にも十分に高い値であり,本研究の成果の重要な一つと見ることができる。これらの研究成果は1990年9月にスエ-デンで開かれた第17回国際航空科学会議で発表されている。 今後これらの成果を発展させ極超音速輸送機の設計を行うためのCADシステムの検討も行った。
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