研究概要 |
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)積層構造は、比強度や比剛性が重要な設計パラメ-タとなる回転体,飛翔体などの運動物体の構造材料として従来から注目を集めている。現状での最大の問題点は、異物の衝突による衝撃損傷(FOD)とそれによる残留強度の評価の問題である。 本研究では、実物での実証試験以前の耐衝撃設計のための材料の選択基準と構造決定に資することを目的として、硬い物体として鋼,アルミを,軟い物体としてシリコンゴムを衝撃体として、これを一方向プリプレグで作られたCFRP積層平板に垂直に低速(非貫通)衝突させ、母材の樹脂の材質,繊維の配向が衝撃損傷に及ぼす影響について調べた。又、損傷後の残留強度を三点曲げ及び四点曲げ疲労試験によって評価した。 本研究の主な成果を要約すると次のようになる。 1.硬い物体及び柔らかい物体がCFRP積層板に衝突した際の損傷のパタ-ンの特徴が超音波顕微鏡、光学顕微鏡、走査電子顕微鏡による観察から明らかになった。 2.界面剥離領域の面積の総計は衝撃エネルギ-比例することを確認した。 3.衝突時の動的な荷重ー変位曲線を精度よく測定しうる計測方法を考案した。これによって、材料の吸収エネルギ-の定量的評価を行うことができた。 4.損傷材の三点曲げと四点曲げ疲労試験では、損傷の進展のメカニズムに大きな違いがあることが判明した。 5.異方性板理論と三次元異方性理論によって、衝撃応答を解析する方法が明らかとなり、衝撃損傷のメカニズムを解明する糸口が拓けた。
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