SーS結合欠損リゾチ-ム(還元Sートリメチルアミノプロピル化リゾチ-ム)をトリプシン消化し、最終生成物をペプチドマップして、各ピ-クがどのアミノ酸配列部分に対応するのかを完全に同定した。トリプシンによる限定分解の途中、ペプチドマップ上にI1からI8までの中間生成物が現れる。それを分画し、集めて再びトリプシンによって完全に分解した後、同じくペプチドマップし、その中間生成物がどんな最終生成物から構成されていたのか完全に同定した。また、最終生成物、および中間生成物のペプチドマップ上のピ-クの面積をトリプシンとの反応時間に対してプロットし、それらの生成、分解反応のキネティックスを測定した。それらの結果をミカエリス・メンテン機構に従って、反応速度定数を計算した。全ての分解可能部位の分解速度定数の一覧表を作成し、トリプシンに対する感受性の高い部位と低い部位をアミノ酸配列上の位置と照合した。その結果、リゾチ-ムのN末端側の半分のアミノ酸配列領域に、トリプシン抵抗性の高い分解部位が集中していることが明らかになった。次に、SーS結合欠損リゾチ-ムを30%のグリセロ-ル溶液中で、同様のトリプシン限定分解反応を行い、全く同様にペプチドマップから分解生成物の出現反応のキネティックスを測定した。その結果、水溶液中で、急速に加水分解されて出現してくるT11とT17T18という最終生成物の出現速度はほとんど変わらないが、トリプシン抵抗力の高い分解部位がグリセロ-ル中でさらに3倍程度分解速度が遅くなることが分かった。 また、ペプチド断片鎖として、SーS結合欠損リゾチ-ムのトリプシン分解反応から得られる最終、あるいは、中間生成物を集め、その円2色性スペクトルを測定した。溶媒中のTFE(トリフロロエタノ-ル)の濃度を上げると、それらのペプチド断片鎖の2次構造の割合が増加する。アミノ酸配列上の断片鎖の場所によって、TFEの濃度が低くても2次構造が出現しやすい断片鎖と、2次構造をとりにくい断片鎖があることが分かった。
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