研究概要 |
分子線およびイオンビ-ムを用いて,表面反応機構を明らかにする目的で,今年度も継続してシリコン表面の酸化反応および金属表面における電荷交換反応について調べた。 パルス化(2ms,50μs)した酸素分子線を加熱したシリコン単結晶(100),(111)表面に照射すると,700℃以上で一酸化シリコンが生成物として質量分析計で検出された。しかし,その波形の崩れは温度に著しく依存するのがみられた。表面温度750℃以下では生成物の出現までに誘導期間があり,反応が中間体を経て進む遂次反応であることが判明した。生成物の緩和波形の解析のために,コンピュ-タによるシミュレ-ション法を開発し,一つの緩和波形から二つの素過程の反応速度定数を求めることができた。さらに,速度定数の温度依存性からそれぞれの過程の活性化エネルギ-を得た。反応速度および活性化エネルギ-は,(100)面と(111)面とでほとんど変らない。反応後の表面を電子顕微鏡で観測すると,(100)面では(111)面を露出する多くのエッチピットが現われていたが,(111)面ではステップの成長がみられた。このことは,反応が面のエッジやステップの所で不均一に進行し,反応活性点は二つの面で類似していると云える。この研究は,我国で始めて反応生成物の分子線緩和スペクトルの観測を成功させたものである。 イオンビ-ムを用いては,種々の金属表面の酸素被覆率を変化させ,準弾性散乱と友跳した粒子のそれぞれについて,イオン化割合を調べた。前年度にシリコン表面で発見したのと同じような現象が金属表面上でも観測された。その理由については現在考察中である。
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