生体系およびモデル系における金属結合部位の微細構造と特性

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63430009
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 山内 脩 名古屋大学, 理学部, 教授 (70029643)
• 研究分担者: 篠原 厚 名古屋大学, 理学部, 助手 (60183050) ; 小谷 明 名古屋大学, 理学部, 助手 (60143913) ; 古川 路明 名古屋大学, 理学部, 助教授 (10011537)
• キーワード: 芳香環スタッキング / 静電的相互作用 / 配位子間相互作用 / 銅(II)ープテリン錯体 / インド-ル環の金属結合能 / パラジウム(II)ーインド-ル錯体 / プテリン補酵素結合モデル / 分子間会合

研究概要

金属タンパク質・酵素の特性は、活性中心における金属イオン周辺の分子環境に強く依存していることから、アミノ酸など生体関連物質と金属イオンとの相互作用の様式と構造を詳細に検討した。
1.錯体における配位子間の芳香環スタッキングと静電的相互作用
芳香族アミノ酸フェニルアラニンまたはチロシンとヒスタミンを含む三元銅(II)錯体を合成し、X線結晶構造解析によりアミノ酸側鎖芳香環と配位したヒスタミンイミダゾ-ル環とのスタッキングを明らかにした。また、エチレンジアミンーNーモノ酢酸とLーアルギニンを含む三元銅(II)錯体について、同様の方法で分子間で配位子側鎖カルボキシレ-ト基ーグアニジニウム基間の静電的相互作用を明らかにした。1.10ーフェナントロリンを配位した三元銅(II)錯体と非配位のインド-ルとは溶液中で相互作用をし、結晶中でfaceーtoーface,edgeーtoーfaceの2種の芳香環ー芳香環相互作用をしていることを見出した。
2.銅(II)ープテリン錯体の構造と性質 補酵素モデルとしてのプテリンー6ーカルボン酸と2,2′ービピリジンを含む三元銅(II)錯体の結晶構造解析から、プテリン環が5位窒素原子で平面位に配位し、軸方向から4位カルボニルおよび6位カルボン酸酸素原子が配位することを明らかにした。残る平面配位座を占める水分子はイミダゾ-ルにより置換され、四元錯体を与えることを錯体の単離などにより見出した。
3.インド-ル誘導体とパラジウム(II)および白金(II)錯体との反応性 2ーメチルインド-ルとインド-ル酢酸は3Hーインド-ル型の窒素原子によりパラジウム(II)と結合することを錯体の合成と結晶構造解析により明らかにした。また、芳香環を有する4N配位白金(II)錯体とインド-ル酢酸などとは水溶液中、比較的安定な会合体を形成することを見出し、カロリメトリ-により結合のエネルギ-変化を明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Osamu Yamauchi: "CopperーPterin Interactions in Biologically Relevant Model Systems" Journal of Inorganic Biochemistry. 36. 312 (1989)
• [文献書誌] Osamu Yamauchi: "Aromatic Ring Stacking in Ternary Copper(II)Complexes [Cu(histamine)(LーAA)(ClO_4)](AA=Phenylalaninate,Tyrosinate).Structural Evidence for Intramolecular Stacking Involving a Coordinated Imidazole Ring" Inorganic Chemistry. 28. 4066-4068 (1989)
• [文献書誌] Akira Odani: "Complex Formation Involving Phytic AcidーCa^<2+>,Mg^<2+>,K^+System(Phytin)Playing the Role of the Energy Storage of Biosyntheses from Plant Seeds" Journal of PharmacobioーDynamics. 13. (1990)
• [文献書誌] Helmut Sigel: "The Imidazole Group and Its Stacking Properties in Mixed Ligand Metal Ion Complexes" Comments on Inorganic Chemistry. 8. (1990)
• [文献書誌] Osamu Yamauchi: "Indole NitrogenーPalladium(II)Bonding.Chemical and Structural Characterization of Palladium(II)Complexes of Alkylindoles and Intermediacy of 3HーIndole Ring" Inorganic Chemistry. 29. (1990)
• [文献書誌] Osamu Yamauchi: "Adduct Formation between Platinum DNA Intercalators and Mononucleotides through Noncovalent Interactions.Spectroscopic and Structural Studies"
• [文献書誌] Akira Odani: "Effects of Phosphorylation of Amino Acid Side Chains on the Formation of Ternary Copper(II)Complexes.Intramolecular Electrostatic LigandーLigand Interactions between Phosphoester and Arginine or Lysine Side Groups"