エキシマ-レ-ザ-光を用いた各種炭化水素(エタン、プロパン、シクロヘキサン、ベンゼン等)の分子状酸素による部分酸化反応において、以下のような知見が得られた。 1.パラフィン系炭化水素について、反応開始剤として、N_2OやO_3、CO_2を用い、ArF(193nm)、KrF(248nm)各エキシマ-レ-ザを用いた実験を行なった。いずれの開始剤を用いた場合も、その光吸収によって酸素原子が生成する反応が開始過程となる。N_2Oを開始剤とした場合、一重項酸素原子が各炭化水素のCーH結合に挿入して生成したホットアルコ-ル分子を経由した反応が進行した。一方、O_3を開始剤とし、シクロヘキサンの部分酸化反応を行った(KrFエキシマ-レ-ザ-)場合、193nmで観察された生成物の二次的光分解が起こらないため、高選択的(90%以上に含酸素化合物(シクロヘキサノ-ル、シクロホキサノン)が得られることが確認された。また、反応様式に関する詳細な検討を行なった。 2.気相酸素をシクロヘキサンに溶解し、液相にKrFエキマ-レ-ザ-を照射する実験を行なったところ、340Kにおけて、部分酸化反応生成物の合計の選択率85%を越え、量子収率も10_4を越える値を得た。気相での反応における量子収率は最高でも10以下であり、この両者の違いは、基質濃度が高い液相の方が、基質からの水素引き抜き反応がより進行することによるためであると結論した。また液相で反応を行なった場合にのみ観察された生成物について、その生成機講を'かご効果'によると推定した。 3.芳香族炭化水素について同様の反応を行なったところ、いずれの基質も、ArF、KrFエキシマ-レ-ザ-光の波長に強い吸収をもっているため、気相酸素による部分酸化反応が起こるよりも速い速度で基質自身の光分解反応が起こり、芳香族環が保持されたままの含酸素化合物は生成しないことが、確認された。
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