研究概要 |
シクロヘプタトリエン(CHT)のメタノール中での電極酸化反応により有機合成上極めて有用なトロピリウム塩等価体である、7ーメトキシシクロヘプタトリエン(7ーMCHT)が高収率で得られること、さらに、7ーMCHTを熱転位により3ーMCHTへ変換した後電極酸化反応すると、トロポン等価体である7,7ージメトキシシクロヘプタトリエン(7,7ーDMCHT)が生成することを既に見出している。昭和63年度は、これらの知見をもとに、研究を行ない、以下に示す有用な知見が得られた。 【○!1】3ーMCHTと塩基との反応により得られるアニオン種と、親電子剤との反応により、シクロヘプタトリエン環への位置選択的置換基導入反応に成功し、その生成物の電極酸化反応を用いた、α置換トロポノイド類の合成を確立した。 【○!2】3ーMCHTのメタノール中での電極酸化反応により、高収率で得られる7,7ーDMCHTと種々の有機金属化合物(R-M,M=Mg,Zn,Li)との反応を詳細に検討した結果、銅触媒存在下のGrignard反応(M=Mg)により、CHT環への位置選択的アルキル置換基導入が可能なことを見出した。また、この生成物の電極酸化反応により、α置換トロポンの簡便な新合成法を見出した。 【○!3】上記の反応を用いた天然物合成として、αツヤプリシンの合成に成功した。 上述の成果に加え、電極還元反応を用いたCHT類の位置選択的分子内および、分子間アルキル化反応、ケトンとのカップリング反応も既に見出している。今後は、これらの新規性の高い反応をさらに発展させると共に、天然物合成への応用を検討する予定である。
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