研究課題/領域番号 |
63440002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 栄 東京大学, 理学部植物学教室, 教授 (50011515)
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研究分担者 |
佐藤 和彦 東京大学, 理学部植物学教室, 助手 (00090522)
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キーワード | 光合成 / 光化学系II / 酸素発生反応 / カルシウム / 23kDaたんぱく質 / 光化学系I / 鉄イオウセンター |
研究概要 |
1.光合成の酸素発生反応にCaが関与していることを示す知見は多いが、何原子の結合Caが機能しているかという基本的な問題は未解決であった。本年度の研究により、この問題に対する明確な解答が得られた。(1)糸II膜標品を高濃度のNaClで処理すると、表在性の23KDaたんぱく質が遊離し、酸素発生が失活するが、Caを添加すると活性が回復する。まずこの標品にはCaが2原子結合していることを見出した。さらに従来の予想に反してNaCl処理によりCaが抽出されないことを確かめた。したがってCaの促進効果は、結合Caではなく、23KDaたんぱく質が遊離することによることが分った。(2)高度に純化した酸素発生複合体にはCaが1原子しか結合していないことが見出された。その酸素発生にはCaの添加が必要であるが、その濃度依存性からみてCaの効果は23kDaたんぱくが失われたことによると考えるべきである。(3)さらにイネのクロロフィルbを欠く変異株から分離した酸素発生標品は、1原子のCaを持つがCa添加なしで高い活性を示すことが見出された。この結果から、酸素発生反応に必要なCa原子の数は1であると結論することができる。 2.系I反応中心で電子受容体として作用している鉄・イオウセンターにはX、AおよびBの3種がある。好熱性ラン藻シネココッカスの系I反応中心複合体についてこれらの熱安定性をESRで調べ、いずれも高度でしかもお互に同程度の耐熱性を持っていることを見出した。さらに尿素や界面活性剤で処理することにより、センターAとBを欠き、センターXのみを持つ標品を得た。現在はさらに他の界面活性剤を用い、鉄イオウセンターや小型サブユニットを選択的に脱離させて、その系1電子伝達反応での役割を明らかにするための研究を開始している。
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