1986年に色素体キネシスの研究過程で、分裂中の色素体のくびれの部分に、色素体の分裂装置ともいうべきリング構造を発見し、"色素体分裂リング"と名付けた。本研究の目的は、単細胞紅藻Cyanidium caldariumから高等植物に至る代表的な植物を材料として用いてこの分裂リングの機能、超微細構造及びその構成物質についての全体像を系統を含めて明らかにすることであった。最終的には、 1.抗アクチン抗体及びその他いくつかの抗体を使ったコロイド-金免疫電子顕微鏡を用いて、分裂リングの形成とアクチン分子の動きとの相関関係を明らかにした。 2.単細胞のクラミドモナスのような真核生物からシダに至るまでのいくつかの標本を選出し、分裂リングの観察を行い、その一般性を証明した。 3.タバコの培養細胞をはじめ発生過程を通じて分裂リングの存在を調べ、生化学的研究に使える材料の時期を検討し、部分的の単離の道を開いた。 4.タバコの培養細胞もしくは分裂リングが明瞭に現れる材料をもちいて、生化学的研究を行う各種遠心法を駆使して、分裂期にある色素体をプロトプラストから単離する方法を開発した。 5.次に、色素体の分裂リングを形成している時期にある色素体だけをより純化する免疫的方法を開発を試みたが、完全に純化するに至らなかった。 6.これまでの結果を系統的に整理し、総説としてまとめた。
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