カドヘリンは、組織分布が異なるE型、P型、N型などのサブクラスに分けられ、これらの結合特異性を検討した。カドヘリンの全長cDNAをL細胞に導入し、それぞれの型のカドヘリンを強制発現させた形質転換株を分離した。これらの細胞は外来カドヘリン分子に依存した接着性を獲得し集合した。そこで、異なる型のカドヘリンを発現する細胞を混合し、接着のパターンを調べた。その結果、それぞれの型のカドヘリンを発現する細胞は混じりあうことなく、別々に集合する傾向を示した。次に、L細胞およびE型カドヘリンcDNAを導入したL細胞をマウスの肺細胞と混合し、肺の組織形成におけるこれらの細胞の行動を観察した。その結果、L細胞は肺の間充織に取り込まれるが、E型カドヘリン発現L細胞は、同じカドヘリンを発現する肺上皮細胞と選択的に結合した。以上の結果から、カドヘリンは、ホモフィリックな反応様式により細胞を結び付けること、また、各型は結合特異性を有しており、細胞の選択的接着性を規定するための重要な細胞表面因子であることが明らかになった。 また、カドヘリンの細胞質領域の機能について以下のような成果を得た。細胞質領域の一部を欠失させた変異分子をコードするcDNAを作成し、これをL細胞にトランスフェクションして、その接着活性を調べた。その結果、強制発現させられた変異分子はL細胞の表面に組み込まれ、また、この分子の細胞外領域の諸性質は正常と同じであるにもかかわらず、この分子をもった細胞はまったく接着活性を示さなかった。さらに、正常カドヘリン分子は、細胞骨格系に結合しているが、変異分子はその結合性を失っていることが分かった。以上の結果から、カドヘリンと細胞骨格との相互作用が、この分子の細胞結合機能にとって必須であることが示された。
|