細胞認識機構の遺伝子操作による解析

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63440005
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 竹市 雅俊 京都大学, 理学部, 教授 (00025454)
• キーワード: カドヘリン / ES細胞 / PCR / ショウジョウバエ / カテニン / ニクトリ胚 / 脳 / cDNA

研究概要

カドヘリン分子群の全貌を明らかにすることを目的として、ポリメラ-ゼチェインリアクション(PCR)により、新しいカドヘリンを検出することを試みた。既知のカドヘリン分子間では細胞質領域のアミノ酸配列が保存されているので、この領域が未知のカドヘリンにおいても保存されていると仮定して、そのようなアミノ酸配列に対応するプライマ-を作製した。これを用い、マウスおよびニワトリ胚の脳由来のmRNAを鋳型としてPCRを行なった。その結果、多数のカドヘリンのcDNA断片を得ることが出来た。その中の2つに注目しcDNAのクロ-ニングを行ない、その塩基配列、アミノ酸配列を調べた結果、これまでに同定されていたカドヘリンとは、やや異なる特徴があることが判明した。すなわちカドヘリン分子群は、サブファミリ-に分類されることが明らかになった。
さらに、これまで未知であったショウジョウバエのカドヘリンの検出を同様なPCR法により試みた。上で使用したプライ-マ-を使用した時には何も得られなかったが、カドヘリン細胞外ドメインに存在する繰り返し配列の一部をプライマ-として用いたとき、多数のcDNA断片が得られた。これらの塩基配列、遺伝子座を調べた結果、少なくとも4種類の異なる分子に分類できることが明らかになった。以上の結果から、ショウジョウバエには、カドヘリン様の分子が多数存在することが示唆された。また、カドヘリン結合タンパク質の1つαカテニンについて、ショウジョウバエの相同分子を分離、同定することに成功した。

研究成果

• [文献書誌] Takeichi,M.Inuzuka,H.他.: "Cadherin subclasses: Differential expression and their roles in neural morphogenesis." Cold Spring Harbor Quant.Biol.60. 319-325 (1991)
• [文献書誌] Takeichi,M.: "Cadherin cell adhesion receptors as a morphogenetic regulator." Science. 251. 1451-1455 (1991)
• [文献書誌] Inuzuka,H.Takeichi,M.他.: "Differential expression of Rー and Nーcadherin in the nervous system and connective tissues during early chicken development." Development. 113. 959-968 (1991)
• [文献書誌] Hatta,M.Takeichi,M.他.: "Genomic organization and chromosomal mapping of the mouse Pーcadherin gene." Nucleic Acids Research. 16. 4437-4441 (1991)
• [文献書誌] Hirano,S.Takeichi,M.他.: "Drosophila PS integrins recognize vertebrate vitronectin and function as cellーsubstrate adhesion receptors in vitro." Development. 113. 1007-1016 (1991)
• [文献書誌] Hirai,Y.Takeichi,M.他.: "Epimorphin: A mesenchymal protein essential for epithelial morphogenesis." Cell. (1992)