研究概要 |
1.前年度の研究によって,マメ科作物の冬作物と夏作物では師部転送細胞の細胞壁内部突起の発達程度に差がみられたことから,冬作物を屋外(最低気温-5℃)と温室内(最低気温18℃)で生育させ,細胞壁内部突起の発達に及ぼす温度の影響を調べた。その結果,低温は高温よりも突起の発達を促進させることが明らかになった。このことからマメ科冬作物は低温条件下では膜表面積の拡大によって師部積荷機能を高めているものと推定した。 2.マメ科冬作物の師部転送細胞における細胞壁内部突起の形成に及ぼす遮光処理の影響を調べた。その結果,遮光条件下では細胞壁内部突起の形成が抑制され,葉構造の陰葉化も認められた。このことから,陰葉においては師部積荷機能も低下するものと推定した。 3.登熟期のコムギの葉身と葉鞘における水溶性糖含量の推移を高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)を使って測定した。その結果,葉身においては,水溶性糖類の主要素はシュ-クロ-スで,糖類の総量は最大でも乾物の6%程度で稈に比べてはるかに少なかった。葉鞘においては葉身に比べてフルクト-ス,グルコ-スとフルクタンがかなり含まれ,出穂期までは稈とよく似た変動を示した。この結果より,登熟期の葉鞘における光合成産物の一時的貯留機能と登熟に対する寄与は低いものと考えられる。 4.ジャガイモ塊茎における光合成産物の師部降荷と蓄積の機構に関する知見を得るため,膜の能動輸送系の酵素であるATPaseの組織化学的局在を鉛塩沈澱法を用して観察した。この結果から,ジャガイモ塊茎においては,シンプラスト輸送系が主要経路であり,光合成産物を一時的に液胞に吸収することによってシンプラスト輸送を促進しているものと推定された。
|