研究概要 |
本研究の目的は,現在ワクチンが実用化されている唯一のウイルス性自然発癌であるマレック病(MD)をモデル系として用いて腫瘍免疫における腫瘍関連抗原の役割を解明することにある。マレック病ウイルス(MDV)によって癌化した細胞の表面にはMD腫瘍付随表面抗原(MATSA)の他に正常細胞にも存在している栓球抗原,胎仔性抗原(CFA),Tリンパ球抗原などの種々の抗原がある。本年度は腫瘍免疫に関るNK細胞に対するCFAとのフェトプロディンのNK活性抑制機序の解明,MATSAの生化学的性状の検討,ならびにMATSAや栓球に対する単クロ-ン性抗体(MAb)のMD可移植性腫瘍細胞(MSB1ーclo18)の腫瘍増殖に及ぼすIN vivoでの影響を中心に調べ,以下の成績を得た。 1)。MSB1ーclo.18由来の精製CFAと鶏胚血清由来のαフェトプロテインは共に,IN vivo,IN vitroにおいて,ニワトリのNK活性を抑制した。しかし,これらの抑制活性は異なる機序によるものと推察された。 2)。MSB1ーclo.18由来の可溶化MATSAをアフイニテ-クロマトグラフ-(MATSAに対するMAb吸着カラム)で部分精製後,DEAEイオン交換クロマトグラフ-により精製し,SDSーPAGEで解析したところ,MATSAの分子量は70Kdであった。また,その性状は糖クンパクであることが明らかとなった。 3)。MSB1ーclo.18を接種したニワトリにMATSAまたは栓球に対するMAbを投与し,腫瘍増殖に及ぼすMAbの影響を調べたところ,前者では腫瘍増殖の抑制はほとんど認められなかったのに対して,後者では著しく抑制された。
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