核小体は、リボゾ-ム合成の場として知られているが、我々は核小体に局在するウイルスタンパクを発見し、これらのタンパクが特にメッセンジャ-RNA(mRNA)の形成、安定性、翻訳にいたる過程でどのような役割を果たすかと解明する研究を続けている。 まずヒトのレトロウイルスHTLVーIの核小体タンパクRex(p27X)がどの様にウイルスmRNAのプロセッシング、安定性、核から細胞質への輸出、翻訳に働いているかを生化学的に研究した。具体的には完全長に転写されたウイルスのRNAが核質でスプライスゾ-ムを形成して重複したスプライスを受けるmRNAと、スプライスを受けることなくウイルスの構造タンパクを作るためのmRNAが、核小体とどの様な関係にあるかを細胞生物学的及び生化学的に検討した。その結果、核小体移行シグナルを持たないp27Xでは、完全長のウイルスRNAが形成されないことを確認した。このことは核小体移行シグナルが完全長のRNAを核から細胞質へ移行するのに必要なシグナルであることを示している。 核小体シグナルには、核への移行シグナルも存在している。この核への移行シグナルだけではウイルスRNAが安定な形で細胞質へ移行できないことも明らかになった。 更にエイズの病因ウイルスHIVーIの調節遺伝子tat、revが作り出すタンパク質にも核小体シグナルのあることを明らかにした。これらの核小体シグナルを変化させると機能も共に変化することが分った。
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