研究課題/領域番号 |
63440029
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
和田 攻 東京大学, 医学部, 教授 (60009933)
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研究分担者 |
長橋 捷 東京大学, 医学部, 助手 (90009994)
金井 好克 東京大学, 医学部, 助手 (60204533)
真鍋 重夫 東京大学, 医学部, 助教授 (90165928)
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キーワード | 発癌物質 / 変異原性 / 複素環状アミン / 暴露指標 |
研究概要 |
発癌性複素環状アミンのヒトでの動態と暴露指標確立のため、昭和63年度においては、実験動物を用いた上記発癌物質の動態とヒト血液、胆汁などの生体試料中の発癌性複素環状アミンの検出、存在形態の検討を中心に研究を実施した。発癌性トリプトファン熱分解物および発癌性グルタミン酸熱分解物をウサギに経口投与し、それらの血漿、赤血球、血小板中の含量の変化を追跡した。この結果、血漿中の上記発癌物質の濃度は、投与量を反映するが、短時間で消失する事、赤血球中のヘモグロビンと結合した発癌物質は、長時間検出される事などが明らかとなった。しかし、血小板中の発癌物質の存在量は、血漿中含量よりも低くかつ短時間に消失した。以上より、これら発癌物質の暴露指標としては血漿中の濃度が短期暴露指標として適しており、長期暴露指標としては赤血球中のヘモグロビンと結合した発癌物質量が適していると考えられた。一方、ヒト血漿中にトリプトファン熱分解物が存在していることを明らかとし、ヒトにおいても血漿中濃度が暴露指標となりうることが示唆された。また、ヒト赤血球中にも、これら発癌物質が存在することを確認しており、抽出方法の改良を行っている。発癌物質の代謝に関しては、グルタミン酸熱分解物について動物とヒトにおいて検討し、ラットにおける同様にヒトは上記発癌物質を代謝しうることおよび排泄経路は、肝、腎を介しており、尿および胆汁中へ排泄されていることを初めて明らかとした。また、代謝物の一部は、アセチル化されたものであることも解明した。以上の通り、当該年度においては発癌性複素環状アミンのヒトにおける暴露指標確立のための基礎的データを得ることができ、当初の研究目標をほぼ達成できたと考えられる。
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