研究概要 |
平成元年度までに,(1)ヒト血液,尿や組織中に発癌性複素環状アミンが存在すること.(2)ヒトが発癌性複素環状アミンを代謝すること。(3)動物実験により,血漿中の発癌物質濃度は,短期暴露レベルを反映し,赤血球中のヘモグロビンとの付加体は,長期暴露レベルを反映する指標となること。以上を明らかとした。今年度は,ヒト集団を対象として,この発癌物質のヒトでの暴露レベルを評価することを目的として研究を進めた。対象として、健常な非喫煙者,ハイリスク・グル-プとして喫煙者、腎不全患者を選び血漿および赤血球中のヘモグロビンと発癌物質の付加体を測定した。この結果,非喫煙者に比して喫煙者では,発癌性トリプトファン熱分解物の血漿および赤血球中レベルは,約2倍に増加していた。一方,腎不全患者では、血漿中の発癌性トリプトファン熱分解物のレベルは,非喫煙者に比して約5倍もの高値を示し,ヘモグロビンとの付加体レベルも,著しく上昇していた。以上の事実は,昨年度までの研究成果を裏付けるものであるばかりでなく,ヒトが,これらの発癌物質に持続的に暴露されていることを示すものと考えられる。こうした結果から,発癌性複素環状アミンのヒトにおける暴露レベル評価方法として,赤血球中のヘモグロビンと結合した発癌物質を測定する方法が適していることが明らかとなった。疫学的研究も更に押し進めるためには,簡単な測定方法に改良することが,今後必要になると考えられる。
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