研究課題/領域番号 |
63440030
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
糸川 嘉則 京都大学, 医学部, 教授 (80025593)
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研究分担者 |
小澤 和恵 京都大学, 医学部, 教授 (00026858)
近藤 久雄 京都大学, 医学部, 助手 (20205561)
横井 克彦 京都大学, 医学部, 助手 (10200883)
木村 美恵子 京都大学, 医学部, 助教授 (60025658)
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キーワード | 輸液 / マンガン / 鉄欠乏 / リンパ球中マンガン濃度 |
研究概要 |
昨年までの研究により鉄、銅、亜鉛、マンガン及び沃素を添加した輸液組成の妥当性を検討するために、動物実験を行っているが、鉄、銅、亜鉛、沃素については、大旨適当な量であることが明らかになった。しかし、マンガンに関してはヒト常用量の3倍濃度の投与でラット脳中のマンガン濃度が上昇することが認められた。そのため、本年度はマンガンに関して検討を加えた。まず、マンガンは必須元素とされているが欠乏状態について明確になっていない。そこでラットを2代にわたってマンガン欠乏飼料で飼育し、マンガン欠乏ラットを作成することに成功した。その結果、マンガン欠乏ラットでは成長遅延、運動の異常、鉄欠乏性貧血、脂肪代謝異常、肝機能障害、組織中マンガンおよび鉄量の低下が発生しマンガンの必須微量元素としての重要性が示唆された。次いで、マンガン欠乏ラットに対して種々な濃度のマンガンを7日間静脈注射により与えマンガン投与の影響を検討した。その結果、マンガンを投与した群では組織において用量依存的にマンガン濃度が上昇した。しかし、鉄欠乏性貧血や低下している組織中鉄濃度には改善は認められず、成長障害、脂質代謝異常、肝障害などもわずかな改善にとどまった。このことは一旦マンガン欠乏が発生すると、単にマンガンを補給しただけでは容易に元の状態に回復しないことを示唆するものである。このため完全静脈栄養等のマンガンが欠乏しやすい状況におかれた場合には、欠乏症の発生を予防するため、あらかじめマンガンを補給しておくことが必要であることを示している。一方、マンガン欠乏を診断する指標を動物実験により組織中のマンガン濃度と良く相関することを目安として検索した結果、リンパ球中マンガン濃度が最も良い指標となることが解明された。
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