1.プロスタサイクリンは平滑筋細胞において抗血栓、抗収縮作用以外に組織蓄積型コレステリルエステル水解酵素の活性を上昇させて細胞内のコレステリルエステルを分解する作用を持っている。我々はプロスタサイクリンの血中での半減期がHDLにより延長することを見出した。HDLは抗粥状動脈硬化作用を持つといわれているがそのメカニズムについては不明である。我々はHDLがプロスタサイクリンを安定化させることによりコレステリルエステルの分解を促進し抗粥状硬化作用を行なっている可能性について検討した。プロスタサイクリンとHDLを培養細胞と共にインキュベ-ションした後、酵素活性を測定するために酵素を抽出した。HDLは有意にプロスタサイクリンによる酵素活性の上昇をさらに刺激していることが判明した。このHDLの作用はプロスタサイクリンの非存在下ではみられなかった。又細胞内の上昇したcyclic AMPの濃度はHDLによりさらに長く持続した。cyclic AMPの濃度は水解酵素活性と共に2′5′dideoxyadenosineで阻害された。これらのことからHDLはプロスタサイクリンの安定性を増強させることによって水解酵素の活性を強めていることが明らかになった。 HDLで制御されている血中プロスタサイクリン半減期について心筋梗塞、不安定狭心症、狭心症、健常人について検討した。血清Apo AI、血清プロスタサイクリン半減期は虚血性心疾患群において有意に低く又この半減期はHDL表面のApo AIとよい相関を示した。
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