研究概要 |
BSA不連続濃度勾配法によりヒト胸腺細胞を分画し、各画分の胸腺細胞の分化レベルの検索を行いその相違について検討した。レクチン刺激によって胸腺細胞に誘導されたインタ-ロイキン・レセプタ-(ILー2R)の解析から胸腺細胞は、反応性の異なる三種類の細胞群に分画されることが示された。つまり、(1)レクチン刺激によってILー2Rを発現し、ILー2を産生して増殖する細胞群(Fr I、II、)、(2)レクチン刺激によってILー2Rを発現するが、ILー2を産生できない細胞群(Fr III)、(3)レクチン刺激によってILー2Rを極めて僅かにしか発現しないかあるいはILー2の細胞内シグナル伝達に欠陥を有する細胞群(Fr IV,V)である。また細胞膜抗原の解析からFr IIIにはCD3・WT31共にhigh intesity positive細胞が多く認められ、この画分の細胞群においてはDNAレベルの再構成がタンパク質レベルでの発現に結び付いている可能性が示唆された。しかしFr IIIにおける主要な細胞群はCD4^+8^+細胞であること、ILー2に対する反応性は認められるもののILー2産生能が低いことなどを総合すると、この画分に存在するCD3・WT31 high intensity positive細胞は未成熟な胸腺細胞と考えられた。またILー2Rの発現を認めず、CD3・WT31発現もlow intensity positiveな細胞が主体の画分IV・VにおいてもT細胞抗原レセプタ-(TcR)β鎖の再構成を認めたことは、少なくともDNAレベルにおいては、これらの細胞もTcR遺伝子の再構成をしている可能性を示唆すると考えられた。しかし、側方散乱が低値であること、培養過程における死細胞に出現はこの画分において最も多く認められることなどから、この画分に含まれる細胞では。機能的なTcRαβを発現できない状態の再構成を起こしている可能性が考えられ、現在Nothern blotなどの方法を用いてTcRーmessag RNAに質的・量的な異常の有無についても検討中である。
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