神経ペプチドの生合成,体内分布及び作用に関する分子生物学的.神経内分泌学的研究

1990 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63440042
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 井村 裕夫 京都大学, 医学部, 教授 (10025570)
• 研究分担者: 中尾 一和 京都大学, 医学部, 講師 (00172263) ; 中井 義勝 京都大学, 医学部, 講師 (10115892) ; 清野 裕 京都大学, 医学部, 助教授 (40030986)
• キーワード: ANP / BNP / CNP / POMC 遺伝子 / サイトカイン / ACTH

研究概要

ナトリウム利尿ペプチドとしてはBNPに重点を置いて研究した。すなわちヒト及びラットBNPを精製して構造を決定するとともに、その測定系を確立した。そしてBNPは脊髄以外の脳には検出できないこと、心臓では心室に多いことを明らかにした。そして正常人では血中BNPはANPより少ないが、心不全ではBNPがANPより高値となることを認めた。更にANP,BNPのmRNA量を測定することにより,正常心ではANPmRNAの97%は心房にあるが、BNPmRNAの67%は心室にあることを明らかにした。更に新しいペプチドCNPの測定系を作り、CNPは脳に高濃度に存在することを認めた。またANPなどのレセプタ-,ANPーA,ーB,ーCレセプタ-の体内分布をNorthern blot法で検討し、組織によって3種のレセプタ-の発現が異ることを明らかにした。更にANP,BNP,CNPのレセプタ-選択性も明らかにし、複雑なナトリウム利尿ペプチド系をかなり明確にすることができた。次にPOMC遺伝子の発現調節について研究を行い、5'上流に存在するcAMP resporse elementの存在部位を明らかにした。またCTA assayによってグルココルチコイドに応答するエレメントの存在部位をほぼ同定することが出来た。そしてグルココルチコイドによるPOMCの抑制は、組織によって発現する場合と、発現しない場合があることを明らかにした。更にAtTー20細胞を用い、サイトカインであるILー1やILー2はPOMC遺伝子の発現を促進することを明らかにした。またILー1やILー2はこれらの下垂体への直接作用のほかに、視床下部CRH分泌促進作用、副腎皮質グルココルチコイド分泌促進作用を有し、下垂体・副腎系の機能亢進を起こすことを認めた。

研究成果

• [文献書誌] Kambayashi,Y.,Nakao,K.,Imura,H.,et.al: "Isolation and sequence determination of human brain natriuretic peptide in human atrium." FEBS Lett.259. 341-345 (1990)
• [文献書誌] Ogawa,Y.,Nakao,K.Imura,H,et al: "Rat brain natriuretic peptideーTissue distribution and molecular form." Endocrinology. 126. 2225-2227 (1990)
• [文献書誌] Mukoyama,M.Nakao,K.Imura,H.,et al.: "Brain natriuretic peptide (BNP) as a novel cardiac hormone in humansーEvidence for an exquisite dual natriuretic peptide system,atrial natriuretic peptide and brain natriuretic peptideー" J.Clin.Invest.(1991)
• [文献書誌] Itoh,H.,Nakao,K.,Imura,H.,et al.: "Preparation of monoclonal antibodies against brain natriuretic peptide and their application to radio immunoassay and passive immunization." Endocrinology. 127. 1292-1300 (1990)
• [文献書誌] Usui,T.,Nakai,Y.,Imura,H.,et al: "Expression of the human proーopiomelanocortin gene introduced into a rat glial cell line." J.Mol.Endocrinol. 4. 169-175 (1990)
• [文献書誌] Naito,Y.,Fukata,J.,Nakai,Y.,Imura,H.,et.al.: "Chronic effects of recombinant human interleukinー1β on hypothalamas,anterior pituitary and adrenal glands in rats." Neuroendocrinology. 51. 637-641 (1990)
• [文献書誌] Imura,H.,Nakao.K.(W.K.Samson,ed): "Atrial Natriuretic Peptides" CRC.Press, 290 (1990)
• [文献書誌] Imura,H.,Matsuo,H.,Nakao,K.,: "Atrial and Brain Natriuretic Peptides" Kodansha Scientific, 320 (1991)