研究概要 |
ナトリウム利尿ペプチドについてはANP遺伝子の心室における発現が心不全で著明に増加すること、BNP遺伝子は正常でも心室に発現が多いが心不全でその発現が増すことを明らかにした。またBNPをヒト及びラットにおいて精製し、BNPの構造には著しい種属差があることを明らかにした。またANP,BNP、CNPの脳内分布について研究し、CNPが最も脳内に多く、ANPがこれに次ぎ、BNPはヒト、ラットでは脊髄にしか存在しないことを認めた。そしてこれらペプチドは脳においては水、食塩摂取の抑制、バソプレッシン分泌抑制、降圧に働いていることをラットを用いて証明した。更にこれらペプチドの3種のレセプタ-の体内分布をcDNAを用いるNorthern blotingで明らかにした。次にPOMCーオピオイドペプチド系については、まずPOMC遺伝子の発現調節を,5^´上流とCATを結合させた遺伝子を種々の細胞に導入することにより検索した。そしてcAMP及びグルココルチコイドに応答する部位をほぼ決めることができた。またグルココルチコイドによる抑制性の調節は細胞によって異り、複雑な因子が関与することを認めた。またサイトカイン(1Lー1,1Lー2)などは下垂体AtTー20細胞のPOMC遺伝子発現を促進することを観察した。更に1Lー1,1Lー6は視床下部を介しACTH分泌を促進すること,副腎レベルでもステロイド分泌を促進することを認めた。第三にGIP,モチリンのcDNAのクロ-ニングに成功し、前駆体の全構造を決定した。そしてこのcDNAを用いて生体のどの組織で発現しているか解明した。またその遺伝子の全構造を決定した。このように分子生物学的研究手技の導入によって、ペプチド研究を大きく前進させることができた。
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