研究分担者 |
竹山 宜典 神戸大学, 医学部付属病院, 医員
宮崎 直之 神戸大学, 医学部付属病院, 医員
山本 正博 神戸大学, 医学部付属病院, 講師 (40166822)
黒田 嘉和 神戸大学, 医学部付属病院, 助教授 (70178143)
大柳 治正 神戸大学, 医学部, 助教授 (00030958)
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研究概要 |
膵癌の治療成積向上には,切除可能な比較的早期の膵癌発見に努力がなされる一方で,なお大多数を占める進行膵癌に対しても積極的な集学的治療が必要である。新しい治療法開発の目的で,膵癌と高率に反応するモノクロ-ナル抗体(MoAb)を作成し,血清学的診断やタ-ゲティングなど膵癌の診断と治療に適した各MoAbの性状を明らかにするとともに,臨床応用に向けての大量生産可能かどうかなどを検討した。 1)モノクロ-ナル抗体と抗癌剤のConjugate開発と作用機序解明の過程で,抗癌剤と高分子との複合体が抗癌剤の体内動態を変化させ,ある程度癌組識への選択性をい持しうることを明らかにし,酸化デキストランとADMの高分子複合体(ADM・酸化デキストラン,ADMーOXD)を作製,drug delivery systemへの応用を,ヌ-ドマウス移植株化ヒト膵癌細胞(MIYA PaCa,PANCー1)で証明した。さらにADMーOXDの薬理学的有効性や副作用の検討は実験動物でほとんど終了し,現在phase O studyに入った。 2)ヒト型モノクロ-ナル抗体作製のための免疫組識化学的スクリ-ニング法に関して過酸化水素を基質としてDAB反応を行い鏡検する直接法変法を確立した。膵癌タ-ゲティング療法に使用可能なヒトモノクロ-ナル抗体の作製に関して,教室の消化器癌手術時の所属リンパ節および合併切除された脾臓をリンパ球源とし,最終的に胃癌患者の脾臓由来のヒトMoAb,No235を選択した。No.235は癌組識においては胃癌で80.0%,大腸癌で62.5%,膵癌で50.0%,胆嚢癌で50.0%の反応性を示した。消化器癌以外の癌,良性疾患および正常組識では胃粘膜で25.0%に弱い反応性を認めるだけであった。さらにこのハイブリド-マは樹立後,一定期間凍結保存し,融解しても良好な抗体産生能を有したのでヒトMoAbのタ-ゲティング療法開発の手掛かりは出来たと思われる。 3)KM10やA10などの抗CEAマウスMoAbのヒトIgGとのキメラ化に関しては,マウスMoAbに可変部とヒトIgGの定常部を持つキメラ抗体を作製し,キメラ化KM10ーIgGおよびキメラ化A10ーFabなどの抗体特異性や抗体産生能,マウス抗体としての活性などを調べ,キメラ化A10ーFabの将来性が最も高いことなどを見いだした。更に,遺伝子操作による大腸菌からの大量精製の可能性についても検討した結果,大腸菌由来の他の蛋白やエンドトキシンなどよりの分離は可能で,現在の高密度培養の成績などより臨床応用が可能と考えられた。
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